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栗野的流通戦争の読み方(10)
天神のデパートは地下街延伸でどう変わったか。


苦節1年半、復活を賭けた大丸

 前回触れたように地下鉄七隈線の開業、天神地下街の延伸で地下街は連日人出で賑わっている。
さて、その恩恵を受けたデパートは岩田屋、大丸、三越のどこだろうか。

 地下街が延びたのは南へ250m、地下鉄七隈線の天神南駅が開業したのは大丸の南端。
となると地理的に最も優位なのが大丸なのは間違いない。
事実、七隈線の開通と同時に最も多くの人出で賑わったのは大丸だった。

 大丸はこの日をどんなにか待ちわびたに違いない。
地下街工事のために大丸北側地下出入り口と地下街との連絡通路が閉鎖されたのが1年半前。
以来、地下街から大丸への直接移動はできなくなり、一度地上に出て1階出入り口から入り直すしかなかった。
そのためどれだけお客さんに不便をかけてきたことか。
言い替えれば来店客数の減少にどれだけ大丸が苦しんできたことか。

 岩田屋の新館オープン、それに対抗した三越の改装にもじっと耐えてきた。
本来なら三越と同じ時期に、岩田屋の移転オープンに対抗して改装をしたかったに違いない。
それでも忍の一字で堪え忍び、やっと地下売り場の改装に着手したのが年が明けてから。
新地下街オープン・地下鉄七隈線開通にすべての照準を合わせてきたからだ。
よくぞ我慢したと言ってやりたい。
その甲斐あって新地下街・地下鉄開業の恩恵を最も受けたのは大丸だった。

人の流れは大丸へ

 地下鉄・天神南駅の乗降客が目の前の出入り口から大丸に入るのはもちろんだが、地下街の通行客も大丸に吸い込まれるように入っていくのはなぜか。
一つにはいままで閉ざされていた大丸への通路が開通したことの目新しさと、大丸地下売り場のリニューアル効果がある。
 だが、それだけで大丸への流れが出来たわけではない。
人の流れは水の流れと同じで、流れやすい方に流れる。

 では、大丸への流れやすさを形作っているのは何か。
それは地下鉄天神南駅の位置と大丸の北側通路の位置、それに地下街通路幅の差である。
 実は地下街の通路幅は東側と西側では差があり、東側通路の方が広くなっている。
そのため両通路に人が一杯の場合は東側の通行客の方が多くなる。
つまり大河の流れが東側通路に出来、イムズ、大丸へと人が流れていきやすくなる。

ベクトルを持続させられるかどうかが課題

 では、この流れが今後も続くのかどうか。
通路幅はたしかに東側の方が広いが、それがそのまま大河となるのは飽くまで人が一杯の時で、人通りが50ー60%の時は逆になる。
 レストランや飲食店でよく見られる光景だが、客が入っていない店はますます客が入らず、客が多い店にはますます客が入るように、人は群れたがる動物である。
 この心理を逆に利用して、行列を作ればどんどん人を集めることができる。こうして流行る店を演出するところもあるし、三越などはこのやり方をうまく取り入れている。

 それはさておき、東西のベクトルを比較してみよう。
東側に位置するのは天神コア、イムズ、大丸、ベスト電器だ。
西側にはソラリアステージ、ソラリアプラザ、バスセンター、西鉄福岡駅、三越、岩田屋本・新館、ビックカメラ、大名地区が位置している。
 このようにざっと見ただけでもベクトルは圧倒的に西側が強い。
東側は奥行きの広がりがベスト電器しかない。
しかも、ベスト電器はビックカメラに客を奪われ、ベスト電器自体のベクトルも弱い。
 こう見てくると東側に位置する商業施設が不利なのはいまさら説明するまでもないだろう。

 つまり街という広がりで見た場合、残念ながら大丸は不利と言わざるをえない。
では、それらを跳ね返し、集客するだけのベクトルが大丸にあるかどうかだ。
 次回は三越等の動きも含めて見ていくことにしよう。


05.02.20 


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