福岡渡辺通の元RKB跡地に建設された大型商業施設「BiVi福岡」(23日オープン)のプレオープンに行ってきた。 当初計画の4月オープンを5カ月延ばしてのオープンであり、一部には「果たしてテナントが集まるのか」という声も聞かれたが、なんとかオープンには漕ぎ着けたようだ。
「美と健康」をテーマとした都市型パワーセンター、というのが謳い文句のようだが、果たして言葉通りに「パワー」を発揮できるかどうか。 各フロアを簡単に紹介すると。 1Fはベーカリーの麹屋、高品質食材のラ・パレットにファッション関係のベルエポック。 2Fはインテリア・カフェのアクタス、レディース・アクセサリーのip by INTERPLANET、リラクゼーショングッズ・ハーブ・雑貨のコンプレ/グラフィカにシスレー、Bセレクトなど。 「美と健康をテーマ」にしたフロアということが明確に分かるのが3Fで、ここにはオーガニックカフェやサプリメント専門ショップ、リラクゼーション、審美歯科、脱毛サロン、ランジェリーショップ、ネイルサロンなどが入っている。 4、5Fはベスト電器が若者をターゲットにしたB−STA天神。デジタル家電、DVD、携帯電話ホビー、自転車、コウメティック、ステーショナリーを。 6Fはレストラン街。7Fは催事場。そして7Fの一部と8Fには一足先に4月からオープンしていたコナミスポーツクラブという具合だ。
さて、BiVi福岡は狙い通りに「天神流通戦争」という荒海に船出できるかどうか。 狙い通りに行けばマスコミが言うように天神の南への拡大が実証されることになるが、果たしてどうか。 私の感想からいえば、タイタニック(に例えるのは大げさすぎるが)と同じことになる。 つまり氷山にぶつかり沈没である。 あるいはBiVi福岡より北側(天神寄り)にあるジークス天神の二の舞になるのは必死だろう。
では、以下にその根拠を。 1.集客に失敗。 私が視察に行った時間は夕方5時前。館内の客は目を覆いたくなる程まばらだった。 各フロアともショップスタッフの方が多く、ベスト電器に至っては配達受付コーナーに5、6人配置し、その前にイスを10列以上も用意しているにもかかわらず客はゼロ。 担当者はパソコンを前に手持ちぶさたで欠伸をするしかない様子だ。レジも同じ状況。 もちろん昼間の時間帯に大挙して押し寄せていれば別だが、ショップの人間に聞いてもそんな風はないから、各テナントとも肩すかしを食ったのは間違いない。
2.宣伝不足。 これぐらいの規模の商業施設がオープンする場合、事前告知をするのが一般的だが、少なくとも私の知る限りではTV、新聞で事前告知を見たことがない。 もちろん皆無と言うことはないだろうから媒体、放送時間を絞って告知をしていたのだろうとは思うが、いずれにしても事前告知が少なかったのは間違いないだろう。 デベロッパーがRKBの関係企業ということから、ライバル各社が積極的に取り上げなかったのか、それともそこまでの話題性がすでになかったのか。 恐らく両方だろう。
3.核テナント不在。 フロアスペースからいえばベスト電器が核テナントなのだろうが、核テナントとしての役を果たしていない。 本来、核テナントは話題性があり、集客力を発揮するから核テナントたり得るのだが、ベスト電器の場合この両方に欠けている。 そのためベスト電器がBiVi福岡全体の集客に大きく貢献することはありえない。
4.立地の悪さ、天神から人が流れない。 決定的なのは立地の悪さである。 BiVi福岡が位置する場所は天神と渡辺通1丁目の中間であり、どちらから歩くにしても中途半端な距離である。 それでも途中に魅力的な施設があれば、まだ点が線でつながる可能性はあるが、現状ではそれがない。 人の流れが考えられるとするなら、大丸・三越→ジークス天神(ビックカメラも一部入れてもいいかも分からない)→BiVi福岡という線だが、問題は途中に2つある信号だ。 しかも、ジークス天神に近い信号は薬院新川をまたぐ交差点であり、バスセンターに出入りするバスが通る交差点だから信号待ちが少し長い。 これが南に向かおうとする人の気持ちも大きく遮ることになる。
人の流れという意味で、川の存在は非常に大きいものがある。 川といっても橋が架かり道路は1本でつながっているから、そんなものがバリアーになるはずがないと思われるが、そうではないのだ。 例えば川端地区が寂れた要因の1つに天神と川端地区の間にある2本の川の存在が挙げられる。2つの川に挟まれた地区が中洲であり、かつてそこに存在した玉屋デパートもいまはないことを考えれば、川の存在が見えないバリアーになって、人の行動を規制しているのがよく分かるはず。
BiVi福岡にとって唯一好材料というより期待したいのは、地下鉄新3号線の開通だろう。従来の地下鉄天神駅より南側に新天神駅ができるため、人の流れが南に寄り、その流れが来るに違いないという希望的観測を抱いていると思われるが、地下鉄 新天神駅の開通で潤うのは大丸・三越、ビックカメラであり、やはりBiVi福岡まではつながらない。 結局、BiVi福岡が辿る道は「福岡の秋葉原」を謳い文句にオープンしたものの半年後には失速した商業施設(現在のジークス天神があるビルの前身)と同じだろう。 1年後には撤退するテナントが出ているに違いない。それどころか、現段階でも3Fに1、2区画、6Fのレストラン街にも2区画空きがあるのだ。やはりグランドオープンを約半年遅らせてもテナントが埋まらなかったということであり、多難な船出 なのは間違いない。
04.09.22 |