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栗野的流通戦争の読み方(3)
Mr.MAX撤退で露呈したFJ都市開発の中途半端な戦略 

 Mr.MAXマリノアシティ福岡店が8月22日に閉店する。
「マリノアシティ福岡」はエフ・ジェイ都市開発(以下FJ都市開発と略)が2000年
10月、福岡市西区小戸にオープンした複合商業施設である。
呼び物は当時、「本格的なアウトレットモール」と話題になったアウトレットゾーン
に、レストランや専門店、観覧車で構成される「ピアウォーク」と、4つの大型専門
店から構成されており、敷地面積は約5万2000u。店舗面積は3万1250u、約2,000台収容の駐車場を備えている。

 大型専門店ゾーンにはMR.MAXのほかスポーツ用品のスポーツデポ、カー用品店のイエローハット、極東ファディがスーパーを出店していた。
最初に撤退したのは極東ファディのスーパー。そして今回のMR.MAXである。
結局残っているのはイエローハットだけで、当初の大型専門店ゾーンというコンセプトはいまや完全に崩れてしまっている。
 別にそのことをとやかく言うつもりはない。消費者は移り気なもの。時代のニーズ
に応じてこまめにテナントを入れ替えることが商業施設の魅力を保つ秘訣である。

 一部にMR.MAXのマリノアシティへの出店は戦略的なミスだったと指摘する向
きがあるが、それは間違いだろう。
4年足らずでの撤退を、先を見切れなかった戦略的出店ミスと言えなくもないが、仮に100歩譲って、「アウトレットモールは数年に一度、あるいは一生に一度行けばこと足りるほど来店頻度が低く、商圏人口も巨大」であり、そんな場所に近隣の買い物主体のディスカウントストアであるMR.MAXが出店しても売り上げが上がらないのは当たり前だという意見を認めたとしても、やはりそこまで言うのは酷だろう。

 それは「マリノアシティ福岡」オープン時に、FJ都市開発自身が「アウトレット
ショップだけでなく、日常集客を目的とした大型店その他を集積することで集客力を上げていく」と語っていることからも分かるように、当初から日常集客を目的にしたゾーンと、非日常的なゾーンの2つを揃えるというのがFJ都市開発の開発コンセプトなのだ。
 そして、そのコンセプトに基づいてMR.MAX、スーパーなどの大型店4店が出
店したのだから、後出しジャンケンみたいな論評にはどうも賛成しかねる。もっとい
えば、それは違うと思う。
むしろ責められるべきはFJ都市開発の方だろう。

 FJ都市開発には昔からおかしな癖がある。
アメリカで人気の商業施設をもってくるというのはどこのデベロッパーもやっている
ことだが、FJ都市開発は常に中途半端なのだ。
まずキャナルシティがそうだった。
非日常的なオシャレ空間を作りながら、そこに最も日常的なダイエーを持ってきた。
一方で若者をターゲットにしたショップを集めながら、もう一方で主婦を対象にした
食品スーパーを入れているのだ。
それも核テナントとして。

 結果はどうだったのか。
ダイエーはまず食品スーパーを撤退し、やがて関連企業1、2社を残し、ほぼ全面撤退したのはよく知られている通りだ。
それはダイエーという企業が不振だったのではなく、スーパーという業態がその場所に支持されなかったということである。
 にもかかわらず、同じ失敗を「マリノアシティ福岡」でもしている。
アウトレットモールという非日常的な場所に、食品スーパーや日常品を扱うディスカ
ウントショップを入れたのだ。
これこそ戦略ミスというか、コンセプトミスである。

 なぜ、そんなことをしたのか。
ひと言で言えば自信がなかったのだ。
アウトレットという業態が福岡(少し広げて北部九州のと言ってもいいが)の消費者
にどの程度支持されるか。
もし、失敗した時のことを考えて、もう一方の核としてスーパーやディスカウントス
トアなどの日常的な業態を持ってきているのである。
キャナルシティにしてからがそうだった。
 多少、FJ都市開発を弁護すれば、アメリカと日本は消費行動が違うと考えたのだろう。
日本人が買い物のために移動する距離はアメリカとは比べものにならないくらい狭い。
アメリカでさえ、「アウトレットモールは数年に一度、あるいは一生に一度行けばこ
と足りるほど来店頻度が低く、商圏人口も巨大」だとは思わないが、日本ではアウトレットモールであれなんであれ、年に数度か数カ月に一度程度とアメリカに比べれば頻度ははるかに多い。
 さらに言うなら、日本の複合商業施設は足下人口、あるいは周辺人口がある程度あるところでなければ成り立っていない。

 つまり、この両者(頻度と人口)を併せた結果、非日常にのみシフトするのはリス
クがあると考えてしまうのだ。
デベロッパーとして失敗は許されない。
だから、どうしても慎重に成らざるを得ない。
それは分かる。
だが、FJ都市開発はキャナルシティでそのことはすでに学習済みである。
にもかかわらず、マリノアシティでも同じことをやってしまったところに、FJ都市
開発のオリジナリティのなさがある。

 アウトレットモールで言えば、チェルシージャパンが鳥栖にオープンした「鳥栖プ
レミアムアウトレットモール」は非日常空間と割り切って創っている。
 もちろん時代の制約もある。
流通業を取り巻く環境は激変しているから、わずか4年足らず前とはいえ、アウトレットのような業態がここまで支持されるとは読み切れなかったのかもしれない。
いずれにしろ、二度の失敗でFJ都市開発も今後は学習するだろうが。

 ただ、西区小戸という地の利を考えると、当初、FJ都市開発が描いた戦略はあながち間違いともいえない。
周辺人口があり、日常買い物客もある程度引き付けられる要素はあった。
しかし、それをダメにしたのは当のFJ都市開発自身だった。

 私自身、オープン数日後に足を運んですぐ気付いたことがあった。
それは動線の悪さだ。
まずレフトイン・レフトアウトになっていない。
そのため「マリノアシティ福岡」に入る信号の手前から車が渋滞してしまう。
さらにMR.MAXなどが入居している大型店ゾーン側に駐車スペースが少ない上に、混んでいると大型店ゾーンの駐車場に入れさせてくれない、入れない。
それだけならまだしも、アウトレットゾーン側の駐車場にカーゴを押して行けない。
もともとそういうルートが設定されてない等の不備が目に付いた。
これではMR.MAXで買い物をして帰ろうという客がなくなるのは当たり前で、や
はりFJ都市開発の中途半端な施設作りがMR.MAX等大型専門店の退店を招いたといえるだろう。

04.08.05


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