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 マーケットの見方の盲点(2)


2つの要素が揃った商品はヒットする

 ヒットするには片方の市場だけではダメなのだ。
2つの市場(要素)が揃った時に初めて爆発的に売れる。
 ところが、既存メーカーは機能を増やした新機種を出すことで、利益率の高い価格帯を維持する戦略を取ってきた。
それを台湾メーカーのアスースはいとも簡単に破ってしまった。

 アスースが証明したのはモバイルパソコン市場の存在だが、単にそこに市場があるということではなく、単機能あるいは少機能パソコン市場の存在である。
 こういう意味でもネットブックは電子レンジと似ている。ユーザーは多機能、高機能を望んでいると思っていたら、実はその対極にある少機能パソコンの需要が想像以上にあったということだ。
 これはOSに関してもいえることで、「あったら便利」という機能を詰め込んだ多機能OS、Windows Vistaを出したがユーザーにそっぽを向かれ、旧OSの使用期限の延長、新OS、Windows7の前倒し発売をせざるをえなかった。

 いずれもマーケットの見誤りである。
見誤りといえばパソコンの使われ方もそうだ。
ネットブックは当初、ヘビーユーザーの2台目、3台目モバイルパソコンとしての使われ方を想定していた。
ところが、実際に購入したのは価格的魅力に引かれた初心者あるいはそれに近い層だった。
免許を取った初心者がまず中古車か軽自動車に乗るのと同じ感覚である。
これは見誤りでも、うれしい方の見誤りである。
 つまり、消費者は高機能で高価格な商品より、少機能でも低価格な方を望んでいるのだ。
 ここに開発者側の思惑と消費者の思惑のズレが生じる。
開発側は便利、よかれと思って色々機能を付与した商品を出すが、消費者が実際に使う機能はご飯やおかずの温め、お酒の燗ぐらいなもので、クッキーづくりその他諸々の機能は結局使われないままというのが多い。

 この傾向は成熟商品ほど多くなるが、メーカーは逆に成熟商品ほど多機能に走る傾向がある。
 なぜなら、機能を付加しないと他者との差別化を図れない(生き残れない)と思うからで、「消費者ニーズ」という見えない陰に怯えているのだ。
                                             (続く)


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