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リーダーの育成システムが必要(1)


リーダーシップとは何か

 今から1年前の2012年5月、新聞紙面に北アルプスで8人の遭難事故死が報じられた。その内6人が福岡県人だったから、福岡では記憶している人も多いのではないか。
 白馬岳で遭難した6人の内5人は医師で、年齢は60〜70代。遭難時の服装は手袋非着用。衣類は綿ズボンにTシャツ、ジャンパー姿という比較的軽装だった。
 これだけ見れば、登山経験の少ない高齢者の安易な登山と判断するだろう。
しかし、ライトダウンジャケットや簡易テントなども持っており、メンバーの中には山登りのベテランもいたと聞けば、素人の無謀登山と退けるわけにはいかない。では、ダウンジャケットを着込んだり、テントを張る間もなく遭難してしまったのだろうか。

 別の見方もある。
「進もうか引き返そうか迷っていたみたいです」「ヨタヨタと歩いていたし、もう引き返そうよ、と言っている人もいましたから、迷っていたんじゃないですか」
 途中で擦れ違った下山者はそう証言していた。
なにやらミステリーじみてきたが、いつ、何が起きるのか分からないのだけは確かで、それらに対処できるかどうかで明暗が分かれることになるのは登山もビジネスも同じだろう。
 5月の気候は移りやすい。福岡では春真っ只中だが、北アルプスの気温はまだかなり低かったに違いない。ただ、この日は汗ばむほどの陽気だったという証言もあるし、山登りのベテランもいたようだから、山を舐めての軽装だったわけではなさそうだ。
 とすれば、移りやすい山の気候に翻弄されたと言えるが、それでも備えが十分だったのかどうかは疑問が残る。

 もう一つ気になるのは「進もうか引き返そうか迷っていたみたい」に見えた行動だ。恐らくその時点で疲れている人、前進することに危惧を覚えた人がいたのだろう。にもかかわらず、なぜ前進したのか。
 リーダー不在で引き返す決定ができず、なんとなく皆で進んでしまったのか、それともリーダーがリーダーシップを発揮できなかったのか。
 もしリーダー不在、あるいはリーダーがリーダーシップを発揮できなかった場合、組織は集団のベクトルが強い方(多数)に引きづられる。

ベテランが陥りやすい罠

 上記の例の場合、集団のベクトルは前進する方に働いたわけだが、なにが作用してそうなったのか。
 例えば目的地までの距離が近い、あるいは目的地に非常に魅力的なものが待っている場合、ベクトルはそちらに向かう方向に働く。
 次に、距離が同じ場合はどうか。この場合も目的地に向かう方向にベクトルが働く。せっかくここまで来たのだからという思いを集団が共有するからで、ここに至るまでの苦労、努力を無にしたくないという心理が働くからである。特にそこまでの苦労、努力が大きければ大きいほど、それをムダにしたくないという心理も大きくなる。これが冷静な判断を鈍らせることになる。

 怖いのはベテランであるが故に陥るミスだ。
リーダーシップと経験値は本来イコールではないが、往々にしてそれらは同じように考えられている。特に日本では。そのためベテランがリーダーになることが多く、そのことが問題を引き起こすことがある。
 ベテラン(経験者)が力とするのは困難を乗り越えてきた自らの経験である。人は初めて経験する困難には慎重になる。しかし、それを乗り越えれば、次も乗り越えられる、乗り越えなければならないと思う。こうして経験を積んでいく。それは悪いことではなく、必要なことでもある。ただ、ベテランになればなるほど困難に慣れ、自らの経験値を絶対視し、危険に際し乗り越える方を選ぶ傾向が出てくる。
 要はリーダーとしての訓練を受けず、経験を積み重ねただけのベテランがリーダーになっていくわけで、彼らはデータに基づく客観的な判断をすることより、困難に立ち向かおうという気持ちの方が非常に強くなり、それ以外の選択を排除する、あるいは受け入れなくなる。かくして前進方向へのベクトルがさらに強くなり、引き返す選択肢はなくなる。にっちもさっちも行かなくなってからやっと立ち止まり、ビバーク(露営)するのがせいぜいだ。

 白馬岳登山メンバーにはベテランが多かったようだから、前進方向へのベクトルはなおのこと強くなる。メンバーに初心者が多ければ、無理ができない、早めに引き返そうという判断ができるが、ベテランが多ければ逆になる。ベテラン勢間で一種の競争意識に似た感覚、他のメンバーからバカにされたくないという意識も働くだろうし、全体のレベルを低い人にではなく、平均値に設定しがちになる。それが無理な前進を生み、悲劇に繋がる。
                                                (2)に続く

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