温水洗浄便座をめぐる攻防 サービスで負けるシティホテル
福岡ホテル戦争の中でも健闘しているホテルは @徹底的な低価格路線のホテル A客室数100室前後で宿泊主体のこじんまりとしたホテル B固定客をしっかり確保しているホテル である。 @の代表はスーパーホテル博多やグリーンホテル(筑紫口)。グリーンホテルは筑紫口という好立地に加えシングル6400円、ツイン9400円という筑紫口界隈では最も低価格な宿泊料金を武器に90%超の客室稼働率を誇っている。 Aの代表はデュークスホテル(博多駅前2)。シングルルームは14、15、16uの3タイプで広め。セミダブルのベッドに全室ウォシュレット付き。チェックアウトタイムも午前11時と、くつろぎと満足をコンセプトにした設計になっている。16uの部屋で8200円という価格は満足度からいえばむしろ安いと感じる価格かもしれない。 デュークスと同じランクのホテルにキヨスクが経営するホテルブラッサム福岡(筑紫口、90室)がある。やはり全室温水洗浄便座付き、シティホテル並の広さのバスルーム、セミダブルサイズのベッドとくつろぎを前面に出しているが、場所が筑紫口からNTTの方に少し入っているのと宣伝不足なのか、それほど知られてない。さらに朝食付きとはいえシングル9000円、11500円の料金は平成不況の現在ではやはりネックになり、苦戦しているようだ。 ところで不思議なのが温水洗浄便座。最近のビジネスホテルでは付いているのが当たり前になりつつあるが、意外にシティホテルでは設置してない。温水洗浄便座は一度経験するとよく分かるが、こんなに快適なものはない。これがないとトイレに行くのも嫌になるくらいで、特に最近の清潔症候群流行りを考えれば、なぜシティホテルが温水洗浄便座を設置しないのか不思議で仕方ない。ビデは設置しているというのに。
冷蔵庫内のドリンク無料
ちょっと変わったサービスでは博多エクセルホテル東急の冷蔵庫内の飲み物無料というのがある。無料といっても小さな冷蔵庫だからそんなにたくさん入っているわけではないし、仕入れ原価にすればそれほどの負担ではないはず。ところが宿泊客にすればすごく得したような気になるから効果的な手といえる。また1フロアすべてを女性用と打ち出し、ゆかたの代わりにパジャマを備え付けたデュークスホテルの例もやはりサービスといえる。
デュークスホテルのポンプ式 ワシントンのトイレットペーパー
このようにサービスに努める一方で、目に見えない部分では徹底的に経費節減の努力をしているのも特徴である。例えばシャンプー、リンス。ビジネスホテルは大抵どこでも1パックごとの使いきりタイプだが、デュークスホテルは家庭で使うポンプ式のものを備え付けている。男性の場合は特に1回の洗髪で1パックを使いきるわけではない。ポンプ式にした分だけ経費を節減できるというわけだ。 キャナルシティ・福岡ワシントンホテルはシティホテル並に布製の室内スリッパを各部屋に備え付けているが、中国で生産することで仕入れ原価を低く抑えている。紙製の使い捨てタイプとは異なり布製なので、毎回クリーニングしたものを用意しているが、クリーニング代まで計算に入れても原価はそれほどかからないと佐々木総支配人は言う。 ちょっと面白いのはトイレットペーパー。どこでも大抵2つ用意しているが、1つは予備だ。ところが人によっては上段のペーパーを使ったり下段のを使ったりとバラバラ。これでは同じように残りが少なくなり、取り替える時期も同じになる。上段のペーパーがなくなってから下段に移行するにはどうすればいいか。そこで考えたのが下段のペーパーは外包みを取らずに入れておく方法。これなら必ず上段からしか使わないから無駄が排除できるというわけ。本来こうした無駄の排除方法は製造業なら当たり前にやっていること。サービス業の考え方がいかに遅れているかということだが、ともあれ客の入りがよいホテルほど頭を絞っているというのが面白い。 面白いといえば、セントラーザ博多の1階にコンビニのローソンがある。ここにローソンができたおかげでセントラーザ博多もサンライフホテルも館内の自販機、室内の冷蔵庫の売り上げがガタ減りしているのだ。それはそうだろう。コンビニのドリンクの方が安いのだから。ところがスゴイのはこのコンビニの売り上げ。目の前が団体の集合場所になるという地の利のよさも手伝って1日の売り上げは100万円を超えるとのことだ。
苦戦するグランド・ハイアット サンライフは日曜日閉館?
ところでサンライフホテルは福岡シティグループのホテルというのをご存じだろうか。福岡シティクラブが運営しているのだ。同クラブの運営するホテルといえばホテル海の中道が有名だが、実はハイアット・リージェンシー福岡もそうである。ここまで書けばグランド・ハイアットがキャナルシティ内に進出したのもうなずけるだろう。因みにグランド・ハイアット福岡の運営母体はハイアット・インターナショナル福岡で、ここには福岡シティグループも資本参加している。 ついでにグランド・ハイアット福岡のオープン以後の状況に触れておこう。若干苦戦気味である。稼働率でいえば60%台。週末に宿泊が集中してウィークデーの稼働率が落ちるというリゾート型ホテルの様相を呈している。つまり観光客中心でビジネスユースが少ないということである。これはシティホテルとしてはかなり危険である。ウィークデーも多いが週末は特に多いというならまだしも、週末はほぼ満室状態だがウィークデーはガラガラとなると……。落差が多ければ危険度も大きい。キャナルシティ全体の人気にもかかわってくることなので早急に手を打つ必要がありそうだ。 楽観できないといえば福岡シティグループのホテル、サンライフも苦戦している。こちらはグランド・ハイアットとは逆に週末に泣いている。金曜日、土曜日と宿泊が落ちて、日曜日は惨憺たるもので、「1号館は日曜日に閉めてもいいくらい」の状態というからかなりの落ち込みである。1号館から3号館まで合わせると全室530室という部屋数の多さがここにきて裏目に出ているようだ。もう一つのネックはレストランが直営でないことだろう。直営でないため価格面の融通がきかずインバウンドが取りにくいし、ホテル全体の戦術の中にレストランを組み込みにくい。つまり朝食サービスなどの手が打てないということだ。さて、経営効率を考えて、日曜日閉館という思い切った手を打つことができるかどうか。 各ホテル共通して頭が痛い点がもう一つある。消費税のアップだ。宿泊料金にすんなり上乗せできるか。それともアップ分を吸収して現状維持でいくか。現状維持価格でいくためにはさらなる経営努力が必要になる。まだまだ福岡ホテル戦争から目を離せそうにない。
データ・マックス刊「I・B」掲載
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