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福岡ホテル戦争(3)
キャナルシティの影に怯える業界


 ついにキャナルシティがオープンし、福岡ホテル戦争・春の陣が幕を開けた。キャナルオープンの影に怯えるのはなにもシティホテルだけではない。ビジネスホテルも同じである。福岡ワシントンホテルの進出に戦々恐々とする一方で、キャナル効果に期待する動きもある。


 ソラリアブランドの凋落は著しく
 ブライダル部門はダブルパンチ


 グランドハイアット福岡、キャナルシティ・福岡ワシントンホテルのオープンに最も神経をとがらせているのはソラリア西鉄ホテルかもしれない。実はソラリアホテルは昨年、シーホークのオープン時にもかなりのダメージを受けている。福岡市内のホテルの中では前年、前々年とブライダルトップの実績を上げていたのが、シーホークのオープンでトップから滑り落とされたのである。
 ところが他のホテルはといえば、ニューオータニ博多はブライダル衣装を新婦3点、新郎が2点、同ホテルの衣装室の中から好きなブライダル衣装をレンタルできる「プリエール」企画を40人という限定付きながら123万円で打ち出したこともあり、件数、売り上げともに伸びている。ホテル日航もブライダルの件数アップ。セントラーザ博多(博多駅中央街)も「95年度は前年に比べ1組減っただけ」(永田道之副支配人)。またホテルイル・パラツオ(春吉)も「年間100組」(杉谷利博支配人)で推移と健闘している。
 こうしたことから考えると、シーホークの挙式組みの内何パーセントかは、本来ならソラリアホテルで挙式予定のカップルだったと思われる。実際それまでは他のホテルが「ソラリアブランド」と悔しがるほど若いカップルには「ソラリアで披露宴をする」のがあこがれだった。だが、若者はいつの時代も気ままである。施設内にチャペルを持ったシーホークがオープンすると瞬く間にそちらへ移ってしまう。
 これがソラリアが最初にくらったパンチだった。続いてキャナルシティに空中チャペルを備えたグランドハイアット福岡のオープンである。ソラリアホテルにとってはダブルパンチである。かって「かもめ族」とか「ソラリズム現象」といわれた「ソラリアブランド」はここにきて急速に色あせつつある。「どだいブランドイメージだけでこれたのがおかしい」というのは業界関係者の声。もはやホテルのブライダルも「待ちの殿様商売」でできる時代ではなくなっている。


 20%〜30%の値引きは当たり前
 値下げ競争はビジネスにも飛び火

 現在、キャナルシティに近く、競合すると思われるホテルには博多城山ホテル、東京第一ホテル、エクセルホテル東急、博多ワシントンホテル(以上は中洲に立地)、博多東急ホテル(天神)、三井アーバンホテル福岡、チサンホテル博多(以上は博多駅前)等がある。東急ホテルはグランドハイアットと、ほかは福岡ワシントンと真っ向からぶつかるだけに危機意識はどこも高い。ただ、なかには「キャナルシティはビジネスホテルではないと思うし、価格も違うから競合はない」(チサンホテル博多)と言い切るところもあるが、多くは「今でも福岡は激戦なのに、先が読めない」と当惑顔である。
 因みに「競合しない」と断言したチサンホテルと福岡ワシントンホテルの宿泊料金を比べてみると、チサンがシングル(サービス料込み)7、500〜7,800円、ツイン14,000〜16,000円、福岡ワシントンはシングル(同)8,690〜10,450円、ツイン16,500〜18,150円。さて、「競合しない」と断言できる価格だろうか。
 「ワシントンさんはかなりの低価格をぶつけてくるという話ですから驚異ですね」。多くのホテル関係者はこう言って警戒心を隠さない。今でも福岡市内の宿泊料金は「20%引き30%引きは当たり前」(某ホテル関係者)の世界である。福岡ワシントンホテルの価格帯によってはさらに値下げ競争に拍車がかかるかもしれない。すでに博多東急ホテルは一部の部屋を値下げして9,000円の料金にしたし、西鉄グランドホテルも一部を値下げして9,500円の部屋を作るなどシティホテルは水面下で軒並み値下げに踏み切っている。
 従来、ビジネスホテルはこうした値下げ競争とは比較的無縁と思われていたが、ここ数年のホテルラッシュでそうもいってられなくなってきた。特に総客室300前後のビジネスホテルの経営が苦しくなっている。これぐらいの規模になると宿泊中心というわけにいかず、どうしても料飲部門やブライダル部門を備えた総合サービスを提供せざるを得ないからである。ところが料飲部門、それも宴会関係の収益が軒並みダウンしている。不景気で法人需要が激減しているからだ。需要が少ないからといっても人員を割けないのが宴会関係。ヘルパー等のパートで賄うにしても限度がある。そのため営業部門の人員が夜は宴会担当に早変わりしたり、1人二役も三役もこなすなど、どこも知恵を絞っているが収益はますます悪化するばかりだ。そのため、表面上の売り上げ数字が大きい法人需要に頼ることから脱却し、数人規模のパーティ需要の掘り起こしに知恵を絞る企画勝負になっている。


 東急、城山、東京第一、三井アーバン
 危機感を募らせる中洲周辺のホテルし


 ビジネスホテルは一にも二にも地の利である。足回りの点からいえば博多駅周辺が第一、次が天神。中洲周辺はこの二つの地域に挟まれた、どちらつかずの地域。本来なら足回りを最優先するビジネスホテルの立地には不向きな場所である。それでも、まだ中洲が賑やかな時代には夜の観光名所に近いという利点があったし、近年は拡大を続ける天神地区に近い準天神というイメージを打ち出していた。ところが今度は一転して強力なライバルの出現である。グランドハイアットと福岡ワシントンホテル合わせて794室。「距離的にはうちがキャナルシティに一番近いから影響を受けるでしょうね」と顔を曇らすのは三井アーバンホテル福岡だけではない。すでに落ち込みが激しい博多東急ホテルや城山ホテルにとっても状況は同じだろう。
 こういう状況の中、中洲の東京第一ホテル福岡は今後宿泊客の増加は見込めないと判断したのかブライダル部門に昨年11月から新規参入している。「ブライダルや宴会は企画次第ですぐアップできる」(セントラーザ博多・永田副支配人)だけに短期的には効力を発揮するかもしれない。それにしても地理的不利感は否めない。

                       データ・マックス刊「I・B」掲載


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