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敗因分析と真摯な反省こそ復活への道(2)


勝ちに偶然はあるが、負けは必然

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と言ったのは元野球監督の野村克也氏である。偶然、勝つことはあるが負ける時は必然で、たまたま負けたということはない、ということだ。
 重要なのは敗因の分析である。これをしっかりやらないと次の勝ちはない。民主党は「不思議の勝ち」で大勝したにもかかわらず、勝ちに舞い上がり、自分達の力と勘違いした。あるい勝因の分析を怠った。その結果、次の選挙で大敗。ところが、その敗因の分析を徹底的に行わず、真摯に反省もしなかった。ために今回の選挙でも惨めな敗北を喫した。
 同じことは2人の政治家にも言える。一体、今回の敗因をどのように分析しているのか、その点だけはぜひ聞いておきたいと思っていた。でなければ私が参加した意味がない。
 そこで、単刀直入に問い質した。
「普通、2期目の選挙は圧倒的に現職有利と言われているのに負けた。そして今回も。その辺りの敗因を自分ではどのように分析しているのか」と。
 それに対してきちんとした分析や真摯な反省の弁は聞かれず「あれだけ○○の問題ばかりマスコミで叩かれれば」とマスコミ批判を口にしたのには少し違和感を感じた。というのも彼は地元紙の元経済部長だったからだ。恐らく記者時代なら彼自身が現職市長の施策や過去の実績に対し厳しく批判する論陣を張ったのではないだろうか。それがマスコミへの恨み事めいたことを口にするとは。

 「市長時代は市の歳出カットを随分されているんですが、そういうことは地味だから有権者にあまり知られてないし、受けなかったのが残念ですよね」
 友人の主催者が助け舟を出した。
 パフォーマンスばかりでは困るが、実績をいかに訴えるかも大事。もちろん、訴えるべき実績がさほどなければ別だが。
元首長の「言い訳」を聞きながら、どこかでよく耳にしてきたような既視感を覚えていた。そう、「いいものを作っているのに売れない」という言い訳だ。
「自分(自分達)はいいことをやってきたが、それが伝わらなかった」と。
では、なにが問題なのか、どこが問題なのか。
 自分がやってきたこと、今後やろうとしていることを理解しない有権者が悪いのか。それとも分かりやすく伝えなかった候補者が悪いのか。
 きちんと伝えることは重要だ。今はインターネット時代なんだから自分で調べろはないだろう。

 「前は『選挙に行って下さい』とお願いしていたが、今は言うのをやめた。私の政策や方針はHPに載せているから『自分で見ろよ』『見に来いよ』と言っている」(元衆議院議員)
 「人は見た目が90%」と言われる昨今。元衆議院議員は「顔」はいい。恐らく女性や若者受けするだろう。
 アメリカの心理学者、アルバート・メラニアンは言っている。「人は第一印象で評価する」と。しかも「見た目55%、話し方38%」だと。「声のトーン、明瞭さ、力強さ」は申し分なく、容姿、姿勢、表情、服装等の「見た目」もいい元衆議院議員はさすがと言うか、アルバート・メラニアンの法則をよく知っているようだ。なんといっても彼は、いまや政治家志望者の予備校化している松下政経塾の出身なのだから。
 しかし、一つ忘れていることがあるようだ。「わずか7%」とはいえ、話の中身で判断されるということを。しかも不用意に発せられた言葉の中に、その人の真実が隠されていることが、ままあるということを忘れていたようだ。

 気になるのが元首長に対する呼び方。「市長」「市長」と連発するのには参った。「国会議員、落選すればただの人」とは昔よく言われたように、市長も落選すればいまは「ただの人」だ。むしろ名前で呼んであげることの方がフランクな付き合い、友人付き合いができるのではないか、と思う私の方がおかしいのだろうか。
 元衆議院議員が元首長を「市長」と呼ぶ度に、ああ、この人は権力に弱い(裏を返せば権力志向の強い)人なのだと思ってしまう。

 この会合に臨むにあたって、ある仕掛けをしておいた。名刺にちょっとした細工をしておいたのだ。一つには手持ちの名刺が残り少なくなっていたこともあるが、わざと古い名刺を持って行った。といっても住所が違うだけで、その他はなにも変わらないのだが。
 以前の事務所住所の箇所に線を入れて消しただけで、新住所は書かずにいた。電話場号とEメールアドレスは記載されている。
 この名刺で彼らがどうするかを見たかったのだ。次回も立候補するつもりなら何らかのアクションを起こすだろう。少なくとも私は元衆議院議員の選挙区民で、そのことは会談中にも告げているから1票獲得するかどうかだ。ただし前回、彼ら2人に投票したという事実だけは誰にも明かさず秘密にしておいた。
 少なくとも私が逆の立場なら、直後にお礼のEメールぐらいは出すが・・・。結果は、読者にも大体察しは付くはず。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。きちんとした敗因分析と、真摯な反省がなければ復活はないのは選挙も企業も同じだ。
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