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地球温暖化防止は明るく、楽しくいこう。


  先に環境アンケートと題して6項目のアンケート調査(?)をしてみた。
 質問は「電気はこまめに消す方ですか」「保温ポットやジャーのコンセントを外出時に抜いていますか」「TVは夜眠るときや外出時にコンセントを抜くか、電源オフにしていますか」「人がいないとき、その部屋のエアコンは切っていますか」「買い物にマイバックを利用していますか」「マイ箸を持ち歩き、割り箸削減に協力していますか」という簡単なものばかり。
真面目に環境問題を考えている人達からはバカにされそうな内容だが、「外出時」とか「眠るとき」「人がいないとき」という言葉を入れたところがミソである。

 例に挙げると怒られそうだが、「30秒で世界を変えちゃう新聞」(6月22日号外)の中に「地球温暖化は止まっちゃうリスト」というのがあり、その中に「冬は厚着をして暖房の温度を下げ、夏は部屋を『ここはサウナだ』と言い聞かせよう」とか「宴会・パーティーは、マイ箸、マイカップ、マイ皿持参でゴミゼロにちょうせんしよう」「お風呂は愛する人と電気を消してろうそくの灯りで一緒に入ろう」などというのがある。
 環境問題を大上段に構えると、この種の意見が必ずといっていいほど出てくる。あまり細かいことを考えていると、そのうち電気を一切使わない生活をしなければならなくなる。そこまでいかないにしても、生活が息苦しくなる。そんな運動は広がらないし、長続きもしないだろう。

 「冷房を28度に設定しよう」というのもそうだ。
会社やオフィスによっては28度から動かせないように固定しているところさえある。ここまでくるとまるで罰だ。それともマニュアル世代ばかりになり、設定温度まで決めなければなにもできなくなっているのか。
 官公庁は号令をかけている手前28度に固定し、「これでは暑くて仕事にならない」と内心不平を言いながらも我慢して仕事をしている。仕事の効率を犠牲にした省エネは拷問以外の何ものでもないだろう。

 電気にしてもそうだ。
ムダな場所の電気は消すにかぎると思うが、消しすぎると会社やオフィスの雰囲気自体が暗く、陰気になる。特に受付が暗い会社は出会う社員も含め全体的に雰囲気が暗い。これでは福の神も逃げてしまいそうだ。
 つまり細部にこだわりすぎると大きなところを見失うことがあるので注意したい。
要は「ムダ」な部分をカットすることで、何がムダかをしっかり考えてみることが必要ではないだろうか。
 例えば誰も使ってないのにつけっぱなしになっているパソコンとか、ダラダラとしている残業とか。

 面白いのは一部の人の回答に見られた「電気代節約のためにやっている」という意見だ。
そう、実はエコは「儲かる」のだ。
地球温暖化防止のためにと思ってやっていると、窮屈になり、やがて続かなくなる。
ところが、エコ生活で儲けていると思うと楽しくて仕方がない(?)はずだ。
特に家計を預かる主婦には。
 「保温ポット・ジャーは火災の心配があるので不在時には必ずコンセントを抜く」という意見も多かった。
 これなどもコンセントを抜くことで火災を防ぎ、電気代も節約でき、結果として地球温暖化防止にも貢献しているわけだ。こういう風に考えれば義務感でもなく、無理なく実行できていいのではないだろうか。
 同じことなら窮屈に考えて息苦しくなるような生活より、明るく、楽しくエコを実践した方が長続きする。
環境問題は明るく、楽しくいきたい。

 ところで、これはうまいなと感じた例があるので紹介しておきたい。
最近、セゾングループが「マイバッグ運動」を始めた。
福岡県内ではセゾングループの食品スーパー・サニーも今月に入って「マイバック持参」を呼びかけている。
 こうした動きはセゾングループに限らず小売業者各社で始まっている。
いずれもレジ袋の削減により石油使用量を削減し、結果としてCO2排出削減に協力するのが目的である。
 レジ袋削減の方法は各社まちまちで店頭で客に袋がいるかどうかを確認するだけに留めているコンビニ業界もあれば、レジ袋を1枚5円と有料化したイオングループの店舗もある。ただイオングループも、現在は1回の精算で1個スタンプを押す方式に替えている。スタンプが20個たまるとトップバリュ商品の100円引きや環境保全型商品と引き換えてくれるのだ。

 セゾングループの場合はレジ袋を辞退するとレジで2円引くキャッシュバック方式。買い物金額にかかわらずその場で2円キャッシュバックしてくれる。
これは利用者に受けがいいようだ。
なかなかうまいやり方だと感心する。
環境問題を正面から意識させるのではなく、1回2円のキャッシュバックが目的とはいえ、知らないうちに地球温暖化防止に貢献しているのだから、こんなにうまいやり方はない。

 こうした方法はセゾングループが開発したものでも同社の「専売特許」でもない。実はファーストフード業界がコーヒーを注文した客に、砂糖は、ミルクは、と聞くやり方と同じである。
 客の方は親切に尋ねられていると思い、ブラックでとか、ミルクは要らない、と答えるが、実は客が断ってくれた分だけ経費節減になっている。
これと同じで、客は2円キャッシュバックを喜びながら、きちんと地球温暖化防止に協力できるのだから、こんなにいいことはない。

I am only doing what I can do.
「私は私にできることをしているだけ」

 セゾングループのマイバック持参を呼びかけるチラシの右上にはハチドリが森に水滴を運んでいるイラスト共にこう書かれている。
「南アフリカの先住民に伝わるハチドリの物語」から取った言葉らしい。

 ある時森が火事になり、森の生き物たちは我先にと逃げていったが、クリキンディという名のハチドリだけは行ったり来たりして、クチバシで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていった。
それを見たほかの動物たちは「そんなことをしたって一体何になるんだ」と笑ったが、クリキンディは「私は私にできることをしているだけ」と答えた、という逸話である。

 たしかに客観的、科学的に考えればハチドリがいくら水を運んでも、そんなもので火が消えたり、火勢が収まるわけはないのは明らかだ。
科学者ならこう言うだろう。
「落とした水は途中で蒸発するから、そんなことはしてもムダだ。もっとほかにすることがあるだろう」と。
 今回、私が行ったアンケートに対する回答の中に、同じような論調でマイ箸運動を激しく罵った某大学の教授がいた。

 しかし、皆が力を合わせれば小さな一滴もやがては大量の水になる。
問題は、嘲笑うことでも、できない理由をあげつらことでも、傍観することでもなく、自分にできることをするかしないかである。
ただし、あまり細部にこだわらず、明るく、楽しくやりたいものだ。


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