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 ふく鮨三太郎のドゥ・イット・ナウ、民事再生法を申請

 8月20日、宅配寿司「ふく鮨本舗の三太郎」を経営する(株)ドゥ・イット・ナウが民事再生法の申請申し立て手続きをした。
残念だ。
 同社の蔀章社長には今年1月、リエゾン九州の例会で「ふく鮨三太郎の元気経営」と題して講演をお願いしたが、その時には経営状態がそこまで悪いとは正直思えなかった。

 ただ、11月か12月に同社を訪問し話をした時、人材面で困っているというようなことを言われていたのが気になったが、それも解決し、いまは大丈夫ということだったので安心していたのだが。

 直接のきっかけは最近の外食離れ、原料高だろうが、危機はそれ以前に静かに内部で進行していた、というのがどこでも共通していることだ。

 危険因子はあった。
1つは関東に進出した時だ。
 それ以前に回転寿司の店舗を出店、閉店したが、これは新業態展開の模索と考えていたし、早めの撤退決断だったので、ほとんど危険因子とは判断しなかった。
 だが、関東への出店は危険因子というのが私の捕らえ方だった。
過去にも九州の企業が何社も関東に進出して失敗しているからだ。

 落下傘で適地へ攻め入るのは通常の何倍ものエネルギーがいるし、送り込むのも精鋭でなければ勝てない。
なにより補給線が伸びすぎる。
人員、原材料などのすべてを現地調達せざるを得ないが、従来、関係がない新規取引になるからコスト高にならざるをえない。

 昨年、蔀社長に会った時、私が最初に尋ねたのは実は関東地区店舗の状態だった。
「あれは撤退しました」あるいは「苦戦しています」という返事なら、即撤退を助言するつもりだったが、「関東はうまくいっているんです」という返事だったので、それ以上は聞かなかった。

 もう1つは、会社の成長が止まっているのではないかと感じたことだ。
それはまずチラシに表れていた。
競合他店のチラシの方がよく入り、「三太郎」のチラシが以前ほど入らなくなっていた。
本部の足下エリアにもかかわらず。
 それで店舗は少し苦戦しているなと感じていたのだが、「通販が非常にいい」と言っていたので、店舗売り上げ減という危険因子増大を見逃してしまった。

 3つ目は数か月前から「ふくすし三太郎」「ドゥ・イット・ナウ」「蔀章」などのキーワードで、私のブログ、ホームページに検索がちょくちょく入り始めていたのだが、そのことをあまり深く考えず見過ごしてしまった。

 いずれも対象と親しくなるとつい冷静な分析をしなくなった私の判断ミスである。
いつもなら予兆を感じ取り、警告を発するのだが。

 もう一つ、今回の民事再生法申請の裏に銀行の存在があることを見逃してはならないだろう。
 このところの建設、不動産関連分野の相次ぐ破綻と同じで、金融機関が資金供給の蛇口を急速に閉めている。
米サブプライムローン破綻の影響が背景にあるのは間違いない。
それと不動産バブル後の金融危機の二の舞を演じ、再び公的資金注入という事態を招きたくないという金融機関の、ある意味「あつものに懲りてなますを吹く」という過剰防衛意識が働いているようだ。
そのため一部には黒字倒産さえ起きている。

 注意しないといけないのは、この金融機関の動きだ。
建設、不動産分野と思い安心していると、蛇口を急に閉められ息の根を止められるということも起こりうる。
 といって、急に妙手が打てるわけでもなく、常日頃の経営が大事という月並みなことしかいえないが、取引先の経営状態にはいままで以上に目を光らせておく必要があるだろう。
 もちろん、社長が女を作って遊び歩く、事業に熱心でないなんてのは論外で、この種の噂に金融機関は結構敏感に反応するものである。



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