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元気企業はここが違う
  〜〜業績アップの秘訣を検証する〜〜


社内ベンチャーで活性化

 景気に好転のきざしは見えているものの全般的にはまだまだである。IT系ベンチャーの勢いがよく、ITが経済を引っ張るかと思われたが、株価にも表れているようにネットバブルは弾け、IT系ベンチャーが経済の牽引力になるには今少し待たなければならないようだ。なぜ、ITが経済の牽引力にならないのか。一つにはまだ雇用力がそれほど大きくないからであり、もう一つには既存産業の領域にまでIT革命が浸透していないからである。やはり経済を支えている底部を動かしてはじめて本物の力になるということだろう。
 しかし、IT関連産業が今後、経済の中心的な力になるのは間違いない。事実、今、元気がいい企業は何らかの形でITに関っている。その端的な例が半導体関連産業だろう。パソコンと携帯電話の好調な売れ行きでICや液晶パネル製造ラインはフル生産が続いている。その恩恵を受け、昭和鉄工も咋夏来、業績が上向いている。
 同社は暖房給湯用ボイラーの老舗企業だが、ここ数年は「企業内ベンチャー」に取り組み、新しい事業部を立ち上げている。その中の一つにプラズマ・ディスプレ−・パネルや液晶ディスプレー・パネル製造用熱処理炉の製造をするサーモデバイス事業があり、これが折りからの液晶需要で急速に立ち上がりつつある。

後発でも工夫次第で食い込める

 同社がサーモデバイス事業部を発足させたのが、1998年4月。業界では後発である。にもかかわらず好調な滑り出しを見せているのは
 1.遠赤外線を利用したヒーターを使用することで、従来製品に比べ消費電力を約3割削減することに成功
 2.従来の炉メーカーはヒーター、板金、設計などを、それぞればらばらに下請けに発注しているところが多い。そのため納期や品質管理の問題で不安が付きまとっていたが、同社は自社一貫生産体制。しかもジャストインタイムのトヨタ生産方式を導入しており、納期と品質管理面では定評がある。
 以上のように、昭和鉄工の例は納期厳守、品質管理の徹底、低コストを武器にすれば後発メーカーでも食い込める好例だろう。

一つの技術を他の市場にも転用

 一方、たゆまぬ研究開発が躍進の原動力になっている企業もある。代表的な例がテクニカル電子、第一施設工業、パラマ・テックなどだろう。
 テクニカル電子は100円パーキングのコイン式無人駐車場システム「タイムパーク」で有名だが、テレホンカードの自動販売機やカラオケのプリペイドカード、テレビ用のプリペイドカード等の磁気カード端末、さらにはPOS端末機器を各種開発している。
 一般的に中小企業はヒット商品を一つ開発すれば、どうしてもそのマーケットに安住しがちになる。最初はフロンティアだった企業もいつの間にか守りに入り、マーケットからの撤退時期を失うことがある。その点、同社は常にフロンティアであり続けることで、企業の活力を維持している。
 例えば電話ボックスに入るテレホンカードの自動販売機もやがて大手が参入してくると手を引き、カラオケのプリペイドカードシステムの開発に移っている。やがてカラオケブームで大手各社が自社専用のプリペイドカードシステムを開発してくると、同社は各社のプリペイドカードが共通で使えるシステムを開発する。すると今度は大手メーカーの方から同社に自社製品の開発を依頼してくるようになる。カラオケブームが下火になりかけると今度は病院のテレビをプリペイドカードで見られるシステムに移行する。このように一つマーケットに固執するのではなく、次から次に新しいマーケットに移行しているのである。
 ただ、新しいマーケットといっても、1から開発するのではなく、すでに開発しているカードシステムの技術を転用して新たなマーケットに参入しているのである。こうすれば商品開発スピードは1から開発するのに比べれば圧倒的にスピーディーだし、開発コストも開発リスクも低く押さえることができる。昭和鉄工のサーもデバイス事業部が短期間で成功したのも同じことがいえる。
 結局、躍進する中小企業とそうでない中小企業の違いは技術開発力の差だけでなく、市場を見る目の差ともいえる。

現状に甘んじるか、チャレンジか

 中小企業にとって一番の敵は「下請けでよしとする精神ではないか」。第一施設工業鰍フ篠原統社長はこう断言する。かく言う同社もスタートは大手メーカーの下請けだった。メーカーに脱却できたのは、下請けの悲哀を嫌と言うほど味わわされ、二度とそんな惨めな想いをしたくないと、必死にメーカーへの脱皮を図ったからである。
 「大手メーカーから明日までに見積もりを持ってこいと言われ、徹夜して見積もりを持っていくと、中身をよく見もせず、頭から数字をサッと書き直された。いくらなんでもそれはないだろう、とこの時ばかりは激しい憤りを感じた。それならそれで最初からこの数字でできるかと言ってもらえば、できる、できないと言えた。なんのために徹夜までして見積もりをしたのか。そんなことがしょっちゅうだった。その時、価格決定権を持たなければダメだと感じた。メーカーになると決めたのはその時です」
 最初のチャレンジはそれまでのエレベーターの据え付け・保守技術を生かし、最速リフトの開発を行った時である。これが九州松下電器に認められた。
 二度目のチャレンジはクリーンルームの中で動くリフトの開発を行った時で、この成功が半導体産業との関係を築くことになる。
 おもしろいのはこれらのいずれもがユーザーからの「こんなものがあればな」の一言で開発されたことである。現状に甘んじていれば聞き逃す一言だ。
 技術開発こそが新しい商品をつくる。この姿勢は第一施設工業鰍ノ、テクニカル電子鰍ノ、そして潟pラマ・テックにも共通している。
 かつては不景気といえば社会全体、業界全体が不景気だった。だが、今は違う。同じ業界でも元気な企業もあれば、青息吐息の企業もある。今の時代にあるのは勝ち組か負け組かである。ITに関係した仕事をすれば勝てるというものでもない。IT関連産業の中にも勝ち組と負け組が存在する。頑張れば勝てるというわけでもない。
 マーケットをどう見るか。
 既存の技術をいかに工夫するか。
 技術開発をするのかしないのか。
 現状に甘んじるのかチャレンジするのか。
これらが躍進企業と衰退企業を分ける指標のようだ。


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