カラー戦略が商品の売れ行きを左右する、と言われるようになって20年以上になるが、その傾向はますます強まっている。しかし、カラーの力が強まれば強まるほど色選びが難しくなっているのも事実。色による差別化を優先したばかりに失敗した例もある。その代表格が「メグミルク」だ。
5月9日から全国一斉発売に踏み切った「好きメグ」では、シンボルカラーの赤色を少し変えて巻き返しに出たが、思惑通りにいくかどうか。今回はカラー戦略からメグミルクを見てみる。
それまでのタブーに挑戦し
牛乳パッケージに赤を全面使用
いまから3年前、日本ミルクコミュニティが赤いパッケージの牛乳を発売して同業者の度肝を抜いた。それまで牛乳パッケージといえば白色が基調と決まっていたところに、赤色を基調どころか赤色で固めたパッケージを発売したのだから、まさに常識破り。業界多方面にカルチャーショックを与えた。マスコミはこぞって「赤いパッケージのメグミルク」のことを取り上げたから、宣伝効果は上々だった。
しかし、結果は惨憺たるものだった。売り上げは目標をはるかに下回り、4工場閉鎖、社長引責辞任に繋がったのはご存知の通りだ。
それにしても各社が牛乳を連想させる白を基調としたパッケージを使う中で、なぜ、あえて「赤色」を使用したのか。
そこにはそうせざるを得ない背景と理由があった。
黒く汚れた雪印のイメージを
払拭するため白以外を使う必要が
同社の前身は雪印乳業である。
雪印といえばシンボルカラーは白。
ところが、その純白、清潔をイメージする白が真っ黒に汚れていたのだから、新会社がイメージを一新したいと思ったのは無理もない。
これが白以外の色をシンボルカラーにせざるを得なかった背景である。
起死回生のためにはなにがなんでも店頭売りを増やさなければならない。
そのためには牛乳売り場で目立たなければならない。
目立てば消費者が手に取る。
こういう発想のもと、目立つ色として赤が選ばれた。
一般的に商品カラーは商品そのものを連想させる色を使うことが多い。
色が販売に直結するからだ。
それ故に各社とも牛乳を連想させる白色を選んでいるばかりか、「明治のおいしい牛乳」のようにデザインにも牛乳ビンの形を使用している。
にもかかわらず「メグミルク」はこうした基本を捨て、あえてタブーに挑戦したのである。
リビングに入り込んできた赤
消費者は赤に好感を持ってきた・・
「メグミルク」が赤色の全面採用に踏み切った背景には最近の流行色も影響している。
ここ数年、赤色が流行色なのだ。
携帯電話やMD、さらには冷蔵庫や洗濯機などの家電製品からインテリア用品まで赤色が増えている。
調理器具の分野ではシャープが水で調理する「ヘルシオ」に赤色を使ってから、タブーの領域はなくなったといっていい。
むしろ消費者にとって、赤は「かわいい」、好意的な色と映っている。
リビングでも赤色が市民権を得ているのだ。
こうした背景から、赤い牛乳パッケージを採用したまではよかったが、販売には結びつかなかった。
いざ商品を買う段になると、消費者はやはり牛乳をイメージする白色のパッケージの方を選んだのだ。(「日系デザイン」03年7月号のアンケート調査によれば、「明治おいしい牛乳」と「メグミルク」のパッケージを見た時、メグミルクが印象に残ったと答えた人が77%もいたのに、「メグミルク」がおいしいと答えた人はわずかに24%、「メグミルク」の方を買う人は26%しかいなかった)
明らかにカラー戦略の失敗である。
もちろん販売不振にはその他の要素、たとえばネーミングとか販売価格なども影響する。それでも、価格的には「明治のおいしい牛乳」より「メグミルク」の方が安かったことを考えれば、カラー戦略が失敗したのは間違いない。
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