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銀行が制服を復活させた理由


 福岡銀行が4月1日から女子行員の制服を復活させた。
2002年に制服を廃止し私服にしてから4年振りの制服復活である。
思えば福岡県下の地場銀行で最初に制服を廃止したのは福岡シティ銀行だった。
ところが、そのシティ銀行は西日本銀行と合併した(された)。

 今回の制服復活で窓口の女子行員に理由を聞いてみると「お客さんに不評だったから」との返事が返ってきた。
 実際、顧客には不評だったに違いないと思う。
私も行員の私服は大嫌いだった。
理由はサービスの低下に繋がるからである。

 同行に限らず制服を廃止した銀行の窓口業務を見ていると、わずかずつ処理スピード等に変化が見られるようになった。
 当初は私服といっても比較的地味目な洋服を着ていたが、徐々に洋服が派手になっていく。
当然それに併せて化粧もアフタ5に近くなっていく。
支店に一人派手目な行員がいれば、残りの行員のファッションも右にならえだ。
こうなりだすと、もう止まらない。
皆がファッション競争を始める。

 ファッションが派手になり出すと、勤務中に髪型、化粧、洋服の乱れが気になるし、シャツの襟がきちんと立っているかどうか確かめなくてはいけない。
目の前の顧客のことより自分のファッションのことの方が気になりだす。
注意力が分散される分だけ集中力が欠ける。
結果、窓口業務の処理スピードに影響してくる。

 以前、「合併でサービスが落ちた西日本銀行」(ブログ「栗野的視点」2004年11月)のところで書いたが、番号札の導入によって窓口業務の処理スピードは落ちている。
制服の廃止がそれを加速させている。

 問題はそれだけでは終わらない。
私服の導入は女子行員の意識をも変えるからだ。
制服の廃止はオンとオフの意識チェンジをできにくくする。
特に週末はどうしても意識がオフの方に偏る。
オフを意識した洋服で朝、家を出てくるのだ。
家を出るときからこれだから職場に入った途端にオンに切り替わることは難しいだろう。

 当然、風紀・規律は目に見えないところで少しずつ緩んでくる。
この「少しずつ緩んでくる」ことが一番問題だ。
急に緩めば誰でも気付くが、「ゆでガエル」ではないが、少しずつ湯が熱くなっても気付かない。
気付いた時はゆでガエルになっていたというわけだ。
これが怖い。

 風紀・規律の緩みは不正に繋がる。
実際、福岡銀行はここのところ行員の使い込みが相次いで発覚している。
危機感を募らせた経営陣が、まだ芽が小さいうちに、と考えただろうことは想像に難くない。
 4年前、同行が制服を廃止した時、「従業員の個性を尊重し、はつらつとした企業イメージをPRする」ためと述べたが、今回、制服を復活させた理由は「組織の一体感を醸成する」ためとなっていることからも明らかだ。

 止まれ、このことは銀行のことと済ませられる問題ではない。
一般企業にとっても同じことだ。
服装の乱れは不正に繋がるシグナルである。
時には社内の女性社員の服装にそれとなく気を配ることも重要だろう。
それと同時に制服の効用をもう一度考え直してみることも。
ただし、色も暗くて、一昔前のスタイルのようなダサイ制服を導入するのだけはやめよう。
男女の別に関係なく、外部に自慢できるような制服を導入して欲しい。
そうすればきっと会社の業績も上がるはずである。


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