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中国在住日本人から寄せられた中国情勢。


 日増しに激しさを増す中国での反日デモ。さすがに北京は厳戒体制を敷き、デモ行動を封じ込めたが、それ以外の都市では規制はそれ程厳しくないような印象を受ける。
だからなのか、反日行動も北京以外の都市で激しさを増し、16日は上海で2万人近い人がデモを行ったようだ。
 日本国内ではセンセーショナルな報道が行われているが、海外から聞こえてくる声は日本国内の報道とは若干温度差もあるようだ。

 事実は常に多面的に見て判断する必要がある。
そこで今回は北京大学日本人留学生会会長の加藤君から送られてきたメールと、私の質問に対する返答メール、また激しい抗議行動を受けたシンセン在住の若い日本人、阿部君から届いたメールを紹介する。
 特に阿部君は昨年福岡大学を卒業し、シンセンのテクノセンターに就職して頑張っている若者で、従業員150人中日本人は彼と彼の上司だけという環境の中で頑張っている。このようなチャレンジ精神旺盛な若者が明日の日本を、いやアジアを作っていくのではないかと、私は密かに期待している。

◆以下は4月12日に送られてきたメールである。
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「反日デモを通じての感想(北京現場より)」

 北京大学の加藤です。学生の立場から今回の反日デモを考えてみました。
反日デモは深刻な状況ですね。昨日僕も監督者として実際にデモ隊の中にいました。
日本でも激しく報道されているようですから詳細は避けますが、正直悲しい現実でした。

 大使館、大使公邸は壊され、日本料理店は店全体が破壊されるような事態もあり、先日も全店営業停止です。今では日本製の車狩りが始まっていて、9日も僕の目の前で日産の車を運転していた中国人女性にデモ隊が飛び掛り、車を破壊、何の罪もない女性は残酷な状況に陥りました。
 僕もクラスメートからは当然冷たい目で接せられ、友好関係に溝ができてしまっています。自分の誠意をもった行動でなんとか持ち返したいところです。

 日本を取り巻く環境も厳しいものとなっています。
実は今回のデモには多くの韓国人が参加していました。連携しているんです。韓国人は「釣魚島は中国のものだ!」と主張し、中国人は「独島は韓国のものだ!」と主張、メディアでは中韓は連携して反日運動を国際化する責任がある!といった感じです。

 日本はアジアで孤立化してしまうかもしれません。
アメリカも9月までの安保理改革については期限を延ばすと表明、その直後アナンが日本に対して、「常任理事国入りの前に、隣国と良好な関係を築くように」と警告、その直後に中米間での「高級官僚級における様々な領域に及ぶ会談の定期化」が結ばれ、中米の距離が一気に近くなった感じです。

 今回の反日デモの発端には文部省による新しい歴史教科者批准が大きく影響しているように思います。
 もちろんその前に起こった、竹島(独島)問題、常任理事国問題、中国との領土問題など数多くの問題が存在していてそれが爆発した感じです。

 日本の政治家、官僚が資源が少なく、国家資源の多くを輸入に依存し、中国市場の合理的活用等によって最近の経済復興が実現したことなどの状況を考慮して上で、今回のような措置を取ったとしたら、僕に言わせれば「ばかげた外交」としか言いようがありません。国家利益につながる措置は何一つとられてないですね。僕は最悪の状態を考えてしまいます。

 今回の一連の事件により(まだまだこれからだと思いますが)日中経済に悪影響が出て、日本の常任理事国入りは不可能(おそらく不可能でしょう)、日米関係に距離感が生まれる(中米の近づきにより)、日本のアジアでの孤立化、そして中国で日本人が生命をおとしたりするようなことがあれば、情勢は極めて厳しいものとなるでしょう。

 ただ僕は今回の一連の事件はある意味いい機会だと捉えています。日本の政府、政治家、メディア、そして国民などにとって、今後どう中国などのアジアと付き合っていくのか、日本という国家はどうあるべきなのか、日本の平和と発展という観点からどのような国際環境を自ら創造していくのかを考えるいい機会になればと思います。
 国民が反自民党デモを起こすほど今回の事態の重大性を深く強く受け止めることを心から祈っています。

 17日に町村外相が訪中しますね。どんな措置をとるのかじっくり考察したいと思います。
 北京大学内でも、全ての門で検問が行われたり、、日本に関する一切の言動の自由を抑えるなど、学内でのデモ抑制に慎重です。授業が始まる今日からが本当の正念場だと思っています。僕にとっても、今後の日中関係、東アジアの協力体制、日本のあるべき姿などを考える貴重な機会です。踏ん張ります!


◆15日に私との間で交わしたメール
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栗野:その後の様子はどうなのでしょうか。
    沈静する方向にありますか、それとも予断を許しませんか。
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加藤:日本のメディアや現在の雰囲気から判断すれば長期戦になりそうです。
 ただ中国政府も規制を限界にし、許可なしにはデモ、集会等はできなくしています。
ただこればかりは事前に確定できる問題ではないのでなんともいえませんね。
個人的には町村外務大臣が来る今週前後、5月4日前後あたりは危ない気がします。

日本が東シナ海における民間企業に与えた採掘権に対しても中国国民は激怒しています。
時間がかかりそうです。


◆シンセンの阿部君との間で15、16日に交わしたメール
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栗野:今回の反日抗議デモはシンセンでも激しかったようですが、現地での実感は   どんな感じでしょう。
   この週末が一つの山だろうと言われていますが、北京の留学生からも先の見   通しが出来ないというメールが来ています。
   17日の日中外相会談の様子によっては長引くかも分かりませんね。
   そちらの状況を教えてください。
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阿部:こちらの状況は、NHKのニュースで御覧頂いたと思いますが、深センのジャスコと西武百貨店(同じ敷地内)がデモ活動家によって看板を壊されたり、ガードマンともみ合いになったりしています。先週末の事件ですが、先々週もおきています。
 広州領事館より、日本人だけの集会の自粛などの通達が、各日系企業に来ております。

 明日(17日)も、デモが予定されているとの情報はありますが、政府の認定していないでもは、法的に違法であるため破壊活動の自粛の圧力がかかっているとの情報もあります。
 あまり過激に反日デモばかりやっていると、世界各国からの非難を恐れるているがため、デモに対して規制をしているとの情報もありますが、しかし、国民、草の根レベルで反日デモが行われている事実をアピールしたいとの背景もあり、こちらのムードは、微妙です。デモの召集は、急発展した携帯やPCのメールによる効果が高いとの見解もあります。

 特に、弊社ある深センの観瀾地区(世界最大の規模のゴルフ場、180ホールもあるミッションヒルズがあります。)は、普通に生活しているレベルでは、大きな問題は起こっておりません。治安はもともとよくはありませんので、香港人、台湾人、韓国人、日本人、アジアの先進国の人たちは、スリや強盗に合わないようにもともと気を付けて生活しているため、特に変わらないのではないでしょうか。
今日は、午後に上司が、深センの中心部の銀行に行くと言ったので、一応、安全のために付いて行きました。

 私自身は、肇英実業の樹脂原料の着色工場(日彩化工)常駐の営業マンとして、頑張っております。
 こちらでは、大日精化等の日系が5社競争相手として存在し、弊社は、一応日系ですが、日本人オーナーの香港企業という位置づけであり、着色価格の競争力とドイツの大手原料メーカーの指定着色ディーラーとして認定を受けており、OAメーカーの特にプリンター関係でプラスチックの原材料を着色して各成型メーカーに販売しております。
 従業員約150人で、営業としての日本人は私と上司の二人だけという環境です。
こちらの業界でトップ企業になるべく頑張ります。

 弊社は、日技城(通称:テクノセンター、弊社社長の川副は、代表幹事も務めておりました。)という日系企業向け工業団地の中にあります。
テクノセンターは、観瀾鎮政府との合弁です。日系企業が約40社、テナントとして入居し生産活動を行っております。


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