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「人罪」が邪魔をする。


 会社ではトップの方針や支持が末端まで届くもの、とは限らない。
トップダウンで物事が進んでいる、比較的社員数が少ない中小企業ではそんなことはないだろうと思うが、むしろ中小企業ほどトップの意向が末端に伝わらない。あるいは歪められて伝わることが多い。
だから中小企業の経営者は苦労する。

 問題はどこにあるのか。
一つには中小企業の経営者が忙し過ぎることだ。
その上、1人で何でもしなければならない。
だから、社員1人1人とゆっくり話をしたり、将来のビジョンを語る時間が取れない。
そうしなければいけないと思っても、なかなかそうできないところに悩みがある。

 もう一つは人の問題である。
中小企業に限らず、社員は新卒採用と中途採用の2種類だろう。
とりわけ中小企業は即戦力を期待することから、中途採用に頼るようだ。
ところが、ここに問題の原因がある。

 例えば最近、倒産、合併、再編成に揺れている流通小売業界。
もともと人材の流動化が激しいことでよく知られているが、昨日までライバルだったA社を辞めた社員を翌日B社が採用する、なんてことは日常茶飯事に行われている。
ライバル企業の社員を入社させるメリットは相手の手の内や内部情報の入手という側面と共に、ライバル企業のノウハウも一緒に得ることにある。
実際それで伸びている会社も多い。

 ところが中途採用にはデメリットも多い。
一つは前職の企業文化風を吹かせ、転職先の会社をバカにした風なそぶりを見せることがままあることだ。
特に自分より若い社員に対してはそうした態度に出やすい。
 もう一つは、やはり転職先企業の理念・経営方針をしっかり理解しようとせず、自分の過去の実績(?)で行動しがちなため、重要な局面で会社の理念や方針と逆の行動をすることがある。
どうかすると公然と社長批判をしたりするものだから、組織が引っかき回され、修復のために無駄な時間と労力を要することになる。

 こうした社員は得てして自分中心に行動しているから、組織の成長に取り残されていることが多い。
その焦りからか、「昔はこうだった」などとまことしやかに話すものだから、事情をよく知らない(入社歴が)若い社員はコロッと騙されてしまう。
こういう社員は人材ではなく、「人罪」である。
悪貨が良貨を駆逐する、という言葉があるように、この種の「人罪」はウィルスのように周囲の人を巻き込みながら感染者を増やしていく傾向にあるので要注意だ。

 実は某社で私が社内セミナーを行った時、この種の社員に遭遇したことがある。
積極的に質問してくるから最初は見所があるのではと思っていたが、質問内容がすべてネガティブなのだ。
よく聞いていると会社の方針とは違っているし、自分が仕事をしない理由付けを言っているのだ。
要は向いている方向が全く違うのだが、なまじ知識が豊富で弁が立つため周囲の人間が引きづられているのだ。
 後ほど取締役からその社員の処遇について相談を受けたから、差し出がましいかとは思ったが、百害あって一利なしだから、早めに別の道を勧めた方がいいのではないかとアドバイスしておいた。

 こうした人間はどんな組織にも必ずいるものだ。
ある者は最初はいかにも理解者のような格好をして近付いてき、
またある者はいかにも有能なタイプを装い、「私に任せてくれ」と言う。
任せるということは放任ではない。
あくまでも理念・方針の下で一定の権限を与えるということだが、この種の人間は常に組織を自分勝手に動かしたがるところが要注意だ。
いずれにしろ、人材ならぬ「人罪」には早めに、断固とした態度で接し、組織から外すに限るだろう。

04.12.28


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