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TPPの問題に関して、エンジニア側からのコメント(1)
〜エンジニアとして農業の問題に取り組めないか


 前回に引き続き、今回も読者のコメントをお届けします。
投稿者はお馴染みの清水肇氏(産業技術総合研究所 招聘研究員、元産総研九州センター所長)です。


TPPの問題は大変参考になった記事です。
でも、政治、経済、セクターの益などが絡みグローバルな背景、時代の流れの中で国益を考えるには大変難しいでした。
多分、全体最適と、部分最適との議論も次元が異なりながら噛み合わない可能性もあります。農業に於ける技術革新の問題と議論が抜けているとも感じました。

エンジニアとして、我が国の産業技術の発展と同様に、農業の問題は我々にとって取り組めないものなのか、以前から考えてますが。効率や利益が優先される話ではなく、食文化の維持も考慮に入れる必要があり、また、工業技術とは違いますが、TPPだけの議論になると多少違和感も覚えます。

言うまでもなく、明治以降、資源の乏しい日本は加工による物の付加価値を高めて、重工業、化学工業、軽工業、繊維産業さらに戦後は半導体などファインなもの、自動車、IT機器他で競争力を高めてきました。一方、最先端の技術勝負、さらにはビジネス勝負が出来にくくなった分野は、他国に市場を奪われてきました。歴史的に見れば、繊維産業、造船業、肥料などの化学工業、鉄鋼産業の一部、最近は半導体も凋落、テレビなどの組み立て産業もしかり、、。


農業はどうでしょうか?

現在、土地、水利権、収穫産物種類などの問題、従事人口の高齢化、流通機構などの諸問題を抱えてます。人間の如何ともしがたい天候に左右される問題は工業技術と異なり大きい差違です。一方票田とも見なされ政治的な見方も優先され(族議員)、昨今のTPP問題も、農業セクターに限られたややコンザーバティブな議論とも感じます。今日まで続いたことを守るのか、時代が変わって、厭でもおうでもグローバルなやり方変える中で、我が国にあった競争力の育成の視点に立った見方も必要ではないでしょうか。

農業の技術革新は何処で議論されTPPの話に繋がらないのでしょうか?

化学工業は、肥料を開発し、さらに病虫害の予防でて農業の生産性を高めました。
勿論其れには異論があり、自然農業、無農薬、有機栽培などの議論も重要な視点で、技術だけでは済みませんが、人口増加に対応するためには、工学の力を借りることやはり必要かと現段階では思います。

我々技術者は今まで持続的発展を目指して、資源、エネルギーの制約をどの様に工業技術の進歩で補えるかを考えてきました。自国の自給率に加え、人口増加に伴う世界の水、土地、食料などの絶対的な不足は進んでいます。努力だけではもう限界で、様々な技術革新、無駄、効率の悪さの排除、さらには利権がらみの不合理性の排除などで最適化は避けられないと思います。

アメリカの遺伝子操作の一世代限りの種子で、耐病害虫、高収穫性と言った技術も進んでます。善し悪しは今は議論しません。

労働力からの解放も各種農機具の開発で進みました。しかし、各農家が小規模の機械を多種類独自で買い込み、年間の活用度を考えると、耕耘機メーカーが利益を上げている気もします。

工業用水を見れば、再利用、節水技術などが徹底しています。コスト的には高いはずですが、使いたい放題は許されず、様々な技術を駆使しています。その結果、日本の水技術は社会インフラとして輸出出来るレベルに達しています。

 農業を現状のようにした責任の一端はJAと農機具メーカーにあると私は考えています。だから両組織に属した人々は今回のTPP問題でも積極的に発言すべきではないかと思っていますが、あまりそうした声は聞こえてこないようです。私が知らないだけかも分かりませんが。
 とはいえ、彼らの責任を云々しているわけではありません。農業問題は単独で存在するわけではなく、資本主義の発展と密接に関係しているからです。その中で農業の将来像をきちんと考えることなく、あるいは将来像が描かれることなく、工業製品と同じ範疇で考えられ、ただ工業製品よりははるかに中途半端な形で農業を資本主義的な利益構造の中に取り込んだのが今日の姿です。
 中途半端な形で、というのは経営的に成り立つ産業としての側面のことです。
日本の農家は兼業農家が圧倒的なのは、専業では食っていけないからで、経営的に成り立たないことを如実に示しています。
 そのことが分かりながら、農家に稼働率の悪い農機具を売り付けていったところに農機具メーカーの責任があると思っています。

                                              (2)に続く


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