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後継者不足より深刻な後継者選びの問題(2)
〜後継者の選び方は3パターン


後継者選びの難しさ

 とはいえバトンタッチは、組織が小さければ小さいなりに、大きければ大きいなりに問題があり、本当に難しい。いま中小企業が抱えている真剣な問題は後継者不足だろうが、仮に後継者候補がいても選び方を間違えて失敗というパターンも多い。今回のソフトバンクの問題はその一例といえる。

 後継者の選び方は大別すると次の3つになる。
1.社内の優秀な人材の中から選ぶ
2.直系を据える
3.ヘッドハンティングで外部から人材を招聘する


 望ましいのは「1.社内の優秀な人材から選ぶ」だろう。これが公平感もあり、社内の不満も比較的少ない。ここで敢えて「比較的」としたのは全くの公平感というのは難しい(ありえないと言ってもいいか)からだ。「なぜ、あいつの方が俺より優秀なのだ」という不公平感を持つ人間は必ずいる。それでも大多数の社員が認める人事に近いものを行うことはできるだろう。

 中小企業に最も多いのが息子などの直系を後継者にするパターンだ。娘しかいない場合、娘婿を社長に据えるケースもあるが、それは孫に譲るまでのショートリリーフで、なぜか直系にこだわる。
 中小企業といっても経営実態は個人商店の延長といったところが多く、社員の方も「どうせ息子が跡を継ぐんだから」と端から諦めている。それ故、後継者が多少能力不足、実力不足でも社内がそれで揉めることはない。
 ただ、そんな後継者人事が決まった時、能力も実力もある社員は会社の将来を見限り去るだけだ。それを「新体制」と喜んでいるようでは先が知れている。ある程度の規模の企業なら、いずれどこかに吸収合併されるか、会社を乗っ取られるか、それとも待っているのは破産か。「3代目が潰す」というのはいまでも真実だ。

 3の社外から後継者人材をヘッドハンティングする例は外国企業ではよく見聞きするが、日本企業ではまだそう多くはない。ソフトバンクのアローラ氏がこの例だが、ちょうど1年前の株主総会でアローラ氏が次期後継者として代表取締役副社長に就任した時、私はある危惧を感じざるを得なかった。これではプロパー社員がやる気をなくすのではないかと思ったからだ。
 実はこの時、アローラ氏の代表取締役副社長就任ばかりが注目されたが、もう一方で降格人事が行われていたのだ。アローラ氏が招聘されるまで代表取締役副社長は宮内謙氏だったので、アローラ氏が代表取締役副社長になった時、彼と宮内氏の2人が代表取締役副社長だろうと考えた。ところが、宮内氏は代表取締役でも副社長でもなく単なる取締役に降格された。

 ソフトバンクグループの代表取締役副社長を外れた理由はアローラ氏が海外事業を、宮内氏は国内モバイル事業に専念できる環境にしたというのが理由である。たしかにグループ内で単なる取締役とはいえ、宮内氏はソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)の社長兼CEOであることに変わりはない。
 だから降格人事ではなく、単なる役割分担の明確化という見方もあるが、実はこの時、海外事業担当取締役の後藤芳光、藤原和彦の両氏も取締役から外されたのだ。そこに持って来てアローラ氏の破格報酬。これでは彼らが能力を否定されたと感じてもおかしくはない。
 アローラ氏の退社は、こうした社内のギクシャクした関係を解消する意図もあったのかもしれない。まあ、その辺のところは分からないが、結局、宮内氏が再び代表取締役副社長に復帰。ソフトバンクグループの後継者選びは再び振り出しに戻ったのだけは間違いない。
 これでは「後5年、10年、社長を続けて行く」と言わざるを得ないのかも。というのも宮内氏の年齢は1949年11月生まれの66歳。後継者になるには年齢が行き過ぎている。

老害だろう、代表取締役相談役

 直系を後継者に据えても、外部から引っ張ってきてもそれぞれに問題があり、どれもこれも最善とは言い難い。とはいえ3つの中では1の社内の優秀な人材の中から選ぶというのがベターだろう。資本と経営が分離されている方が社内に優秀な人材が集まりやすいのは事実だから。
 しかし、中には代表権を握った途端になんでもできると勘違いをして、いつまでもトップの座に居座り続ける者も出てくるからよけいに難しい。いや、どこぞのコンビニエンスストアの会長だった人のことを言っているのではない。それは大企業だけの話ではなく、中小企業でも、地方自治体の首長でも起こる話だ。
 「権不10年」(同じ者が権力の座に10年以上あるべきではない)を唱え、2期8年で熊本県知事を退任した細川護熙氏は、途中で県政を投げ出した等の批判もあったが、トップの座に居座り続ける首長ばかりが多い昨今、この潔さを見習って欲しいものだ。

 個人的には老害視される前に代表権を早く譲るべきだと言い続けてきたが、後継者に後継者たる能力がない場合はそうとばかりも言えない。能力がない者が後を継ぐと周りが迷惑するというか、会社が傾いた例は多い。そうなると一番迷惑するのは社員だろう。暗愚なトップの周りには腹に一物ある人物がよく集まるものだが、そのことに気付かない者は多い。
                                                 (3)に続く



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