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パラダイムをシフトしよう。


 明けましておめでとうございます。
皆さん年末年始はどのようにお過ごしになりましたか。私はいつも車で帰省しますが、今回は安全を優先し列車で帰りました。お陰で久し振りに車中読書を楽しむことができましたが、帰省中の外出には非常に不自由をし、改めて地方の足について考えさせられました。
 4日に帰福しましたが、福岡はまるで冷蔵庫の中のような気温でビックリ。そのせいか、週末から風邪でダウンしてしまいました。夜中の咳が止まらなくて苦しい思いをしています。皆さんもご注意下さい。
 では、今年最初の「栗野的視点」をお送りします。

 タイトルの言葉は今年の年賀状に書いたものです。
因みに昨年は「再編の時代」でした。予期した再編は起きませんでしたが、年末になって民主党議員9人が離党し、年明けに新党結成の動きとなり、政界再編の動きは1年遅れで今年起きそうな気配です。
 経済界の方は昨年から再編の動きが出ていますが、再編しなければならないのは企業だけでなく、経営者、特に中小企業経営者の考え方のような気がします。

 実は昨年がパラダイムシフトのターニングポイントになるのではないかと思っていました。しかし、予想した変化は起きませんでした。少なくとも日本では。
 だが、世界の動き、我が国を取り巻く環境を見ていると、パラダイムをシフトする必要があるように思います。特に中小企業は、戦略的にパライムシフトを図る必要があるのではないでしょうか。

歴史は螺旋形に進む

 既存のパラダイム(価値観)は大量生産・大量消費によるコストダウンです。かなり以前から「大量生産・大量消費の時代は終わった」と言葉では言われています。だが、現実は大量生産拠点・大量消費地を求めて世界を、それこそグローバルに動き回っているだけです。特に大企業(製造業、流通業を問わず)は。
「今後は中国が一大消費地になる。中国の次はインド。インドの台頭は著しい」
「製造拠点を中国だけに集中するのはリスクが高い。成長著しいベトナム、インドなどに分散すべきだ」
「これらアジアの活力を取り込めるかどうかが、企業、ひいては日本が成長できるか否かにかかっている」
 いずれも間違いではないでしょう。全面的にその通りかどうかは別にして。

 ここでちょっと思い起こして欲しいと思います、1985年のプラザ合意後の日本を。
急激な円高が進み、企業はこぞって生産拠点を海外に移転し、国内の産業空洞化が叫ばれました。
 歴史は繰り返すとはこのことです。もちろん完全に同じ形で繰り返すわけではありません。現象的に似たことが起きるということです。
 歴史は螺旋形に進む−−というのが私の考えですが、最近の現象はまるで既視感のような気がしていませんか、皆さんも。

2番手集団は団子状に

 ただ87、88年当時と全く同じではなく、違う点もあります。
何が違うのか。それは2番手3番手の存在です。前回は縦一列に並んで走っていました。しかもトップを走る日本と2番手3番手との距離は結構離れていましたが、いまは団子状で2番手集団が走っています。しかもトップとの差は殆どなく、いつトップが入れ替わってもおかしくない状態です。2番手集団に韓国、中国などASEAN諸国が入っているのは言うまでもないでしょう。
 つまり、製造能力、技術力、品質ともに殆ど差がなくなっているのが現在だということです。ということは、コストダウンを求めて生産拠点を移すなら、次から次に移し続けなければならないということです。韓国から中国、中国も沿岸部から内陸部へ、その次はベトナム、インドへというように。

生産拠点の集中リスクも

 コストダウンを求めて生産拠点を移すつもりが、新規設備投資や現地で一定レベルの品質にするまでの教育投資などコストもかかります。そうするとトータルコストで見た場合に果たしてどうかという問題が出てきます。
 もう一つは、大中企業の場合はそれができても、弱小零細企業はそこまでできないという、まさに私が87、88年当時に感じた問題があります。

 結局、コストダウンを求めた大量生産には勝者がいない、別の言い方をすれば勝者が目まぐるしく替わる競争でしかなく、今日の勝者も明日は敗者になる可能性が非常に高いということです。
 それでも大手を中心に体力がある所は次々に生産拠点を移していくでしょう。しかし、それも今回のタイの洪水に見られるように、どこかの国・地域に集中させるとリスクも高くなります。となると今後は分散せざるを得ない。これは集中させることによりコストダウンを図るという考えと矛盾してきます。

ユニクロ方式からの脱却を

 大量生産・大量消費の代表は自動車産業と、ユニクロに代表される衣料品製造小売り業です。特にユニクロは自動車産業と比して歴史が新しく、急成長したことから注目されていますが、ユニクロがいくら儲かっても日本という国は豊かにはなりません。 
 そんなことはない納税額が増えるから、国は豊かになるはずだと言われるかも分かりませんが、いくらユニクロが売上高をアップしても国は豊かにはならないのです。

 理由はちょっと考えれば分かることですが、まず商品は海外製造です。ということは、いくら大量に製造しても製造分野での国内雇用は産みません。
 では、出店増による雇用はどうかといえば、若干増えます。あくまでも若干です。そういう意味では自動車産業の方がはるかに貢献しています。その代わりリストラする時のマイナス貢献も比べものにはなりませんが。

 しかし、この方式は長く続かないでしょう。すでに今期のユニクロはヒット商品がないこともあり、思ったほどには売り上げが伸びていません。ファストファッション分野での競合が増えたことも一因だと思われますが、差別化をどうするのか、ブランドをどう確立するのかが今後問われていくでしょう。
 なによりも大量消費(地球規模で見れば大量のゴミ廃棄)を生み出すやり方が果たしていいことかどうか。

 今後1、2年の間にパラダイムが問われると思います。まず最初は異なるパラダイムが拮抗し、次にパラダイムがシフトしていくだろうと思います。
 今年はこうした動きを重点的に取り上げていきたいと思います。


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