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人は見た目に騙される(2)
小保方、佐村河内騒動の背景から学ぶもの


人は見た目に騙される

 ところで、小保方氏が30歳という若さでなく、メガネをかけた、どこか冷たそうなリケジョで、割烹着ではなく白い上っ張りを着た実験女子風だったら、科学とは関係メディアまで「STAP細胞」を競うように取り上げただろうか。
 同じことは「全聾の作曲家」と言われた佐村河内氏についても言える。もし彼が、その後の謝罪会見の時と同じ格好をしていたらNHKは、各メディアは競うように彼のことを取り上げただろうか。
 答えはノーだろう。小保方氏も、佐村河内氏もあの格好、風体だったから「絵になる」と感じ、取り上げたのは間違いないだろう。

 人は見た目に引かれ、見た目に騙される。「ボロを着てても心の錦」は歌の世界であり、いまや誰も信じはしない。中身はボロでも錦で着飾っていれば、それに引かれ相手を信じてしまうのが今だ。
 ヒトラーはそのことを熟知していた。だからナチスの軍服はいま見ても格好よく、ファッションセンスでナチスの軍服を超えるものは未だない。ヒトラーはこれに加えて集団催眠という手法を使った。夜、篝火を焚く中で演説をし、集まった人々を一種の催眠状態に導くのだ。
 夜は人の思考が鈍くなるのはよく知られている。闇は人々の神経を研ぎ澄まさせる。そこにスポットライトを浴びた人物が登壇すれば、否応なく参加者は彼を注視し、彼の言葉に耳を傾けることになる。それに音響が加われば瞬く間に陶酔状態に陥り、集団催眠がかかる。いまでは、こうした手法はライブなどでもごく当たり前に使われていることではあるが。

優れたプロデュース・演出力

 「人は見た目が9割」というタイトルの本がある。本の内容は、言葉以外の情報の方がはるかに多く相手に与えているという真面目なものだが、こうしたタイトルを付けることからして現代的だ。昔は心を磨け、というタイトル、内容の本が多かったが、近年は外見磨きばかりを強調する傾向にある。
 外見ばかり気にせず少しは中身を磨くことを考えろ、と言いたくなるが、戦国武将からして見た目にこだわり、兜の立物に派手な飾りをしていたのだから、「最近の若者は」と言うわけにはいかない。要は中身と外見のバランスの問題だが、外見ばかりを重視するのが近年の傾向だろう。

 しかし、こうした傾向をバカにし、「中身さえしっかりしていれば結果は黙っていても付いて来る」と言っていると後で泣きを見ることになる。
 モノがない時代、不足している時代はいいモノを作るだけで売れたが、モノが溢れてくるとどこもかしこも似たようなモノになり、中身の差別化といっても非常に些細な部分での差別化しかなくなる。
 細かい差別化など消費者が気付くわけでも、それを必要としているわけでもないからデザインやカラーといった見た目(外見)で選ぶことになる。かくして見た目を重視しない中小零細企業のモノは売れなくなる。これが日本の中小零細製造業の辿ってきた道だ。

 いずれにしろ佐村河内、小保方両氏のプレゼン力には感心する。どうすればメディアが注目するか、一般の人が関心をもつか(自分を高く売れるか)ということをよく知っているのだ。このこと自体は悪いことでもなんでもない。それに見合う中身さえあれば、むしろ積極的に見習いたいものだ。そうすれば「いいモノを作っているのになぜ売れない」と愚痴をこぼさずに済むかもしれない。
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