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市場攻略には切り口の工夫を
         
〜〜なぜ、リエゾンでマイ箸を作るのか(4)


切り口を工夫すれば市場は開ける

 ここでもう一度、箸市場を考えてみよう。
どこの家にも箸はある。そして箸は消耗品である。
こう考えるとマーケットがありそうに思えるが、その一方で日本食市場が縮小し、出生率が減少していることからも分かるように、箸市場が将来拡大するとは到底考えられない。

 このような成熟市場に参入するのは難しい。
かといって諦めていたのでは、いつまでたっても中小企業は既存市場に参入できないことになる。
諦めるのではなく、いかに参入するのか、どこに勝機を見いだすのかを考えることが重要で、それさえ分かれば手はあるし、十分戦えるのだ。

 では、箸市場のどこに勝機を見出せるのか。
そのためにはマーケットをどのような切り口で切るのかということが重要になる。
その一つが「マイ箸」である。
環境問題を追い風に「マイ箸」という切り口で切ることにより、既存マーケットに新たな穴が開くのだ。
 いままで箸は自宅で使うものだった。
ところが外で使うということになれば、よそ行きの箸を買わなければならない。
そこに新たな需要が生まれる(市場を創造する)。
あとはその創出市場をどのように広げるかだ。

 ただ、より市場を広げるためにはもう一つの切り口を加える必要がある。
そうすれば「桶狭間」になる。
では、「桶狭間」とは何か。
マイ箸に関していえば、いま現実に商品開発をし、既存市場へ参入しようとしているところなので、その具体的な戦略・戦術をここでこと細かく明らかにするわけにはいかないので、あとは各自で考えて欲しい。

中小企業から脱するために

 ここでちょっと角度を変えて、中小企業はなぜ中小企業であり続けるのかを考えてみたい。
というのは、どんな大企業も、例えば松下にしろ、ホンダ、ソニーにしろ、最初は小さな町工場からスタートしている。それがいまでは日本を代表する大企業である。
その一方で中小企業のまま終わっているところが圧倒的多数である。
両者の分かれめはどこなのか。

1.する前に諦める
 多くの中小企業に見られるのは、する前に諦める態度である。
「それはもう他社が作っている」
「作っても売れるものか」
「その価格ではできない」
「うちにはその技術がない」
 よくもまあこれだけ出てくるものだと思えるほど、できない理由が次から次へと出てくる。

 よく聞いていれば「できない理由」ではなく「しない理由」を言っているのだ。
何かを始める前に「しない」ことを考え、「しない理由」を言っているのだ。
なぜ、しないのか。
新しいことにチャレンジするのはリスクがつきまとうからである。
早い話が「リスクがあることはしたくない」のだ。
これではなにもできるわけがなく、10年1日のごとく同じ仕事をする以外にない。
結局、中小企業から脱することができるかどうかは、何かをするかしないかであり、する前に諦めることではない。

2.市場調査をしない
 次は商品開発、モノづくりをする際に市場調査をしようとしないところが非常に多い。極論すれば「作りたいから作る」「自己満足のために作っている」ところが実に多いのだ。

 孫子の兵法に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」とあるが、戦う前に最低限必要なのは、相手に対する情報であり、それに基づいて対策を講じるのである。
・類似商品があるのかないのか。
・価格帯はどうなっているのか。
・材質、デザインは?
・同業他社の数は多いのか少ないのか。
・販売方法、販売先はどうなっているのか。
・購入層は男性女性どちらが多いのか。
・年齢層は等々。
 少なくともこの程度のことは最低限必要だろう。

 次が「おのれ」の分析である。
「おのれ」とは自社のことであり、自社の技術力、販売力、資金力のことであり、商品のことである。
 このような自軍の戦力分析をきちんとしていなければ、正規戦で立ち向かうのか、それとも奇襲、ゲリラ戦で戦うしかないのか、この局面で戦うのか戦わないのかの判断すらできないだろう。
 ところが、この自明のことが中小企業では行われていない。
そんな戦いは無謀というしかないだろう。

3.コンセプトが明確でない
 多くの中小企業は「作りたいモノを作っている」だけで、マーケットやターゲットを想定しているわけではない。
だから、うまく当たれば売れるし、そうでなければさっぱり売れない。当たるも八卦、当たらぬも八卦の占いみたいなものだ。

 それでもまだモノが不足している時代は作れば売れたが、いまのようにモノが溢れている飽和社会では作っても売れない。
商品に明確なコンセプトを持たせ、想定した顧客ターゲットを狙わなければ売れない。
作れば売れていた時代はいわばマシンガンか散弾銃で適当に撃てば当たっていたのと同じだ。しかし、いまはライフルで狙い撃ちをしないと当たらない。
なにを狙うのか、どこを狙うのかもはっきりせずに、いくら撃っても当たらないのは当たり前だろう。

                                     (次回に続く)


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