Google

 


未来工業に見る、社員のやる気を引き出す経営(1)
〜ホウレンソウは食べない


 「人と反対をすることにした−−」
 過日、未来工業株式会社(岐阜県安八郡輪之内町)の山田照男相談役の講演を聴く機会に恵まれたが、冒頭、氏はそう切り出した。
「いいものを安くって言うけど、皆それで儲かってないんだから。儲かってない会社と同じことをしても儲かるわけがない。だから、人と反対をすることにした」
 人の行く逆に道あり、という言葉があるが、氏の話はまさにそれだった。
同社の経営はユニークなことで知られ、バラエティ番組などにも「ケチ経営」の側面が取り上げられていたりするからご存じの方も多いだろう。
 事務所の蛍光灯の紐一つ一つに担当者の名札が付けられ、席を外す時は自分の担当蛍光灯を消すなど徹底したケチぶりかと思えば、社員旅行は毎年海外に行っている。それも社員の積み立てで行くわけではなく、全額会社負担で行っているわけだからケチどころか随分太っ腹だ。

ホウレンソウは食べない

 冒頭の他社と反対の中身が実にユニークである。
1.ホウレンソウを食べない。
2.ケータイ、残業禁止
3.成果主義ではなく年功序列
4.社員の副業バイトOK
等々
 ホウレンソウは組織力アップに必要不可欠といわれる報告・連絡・相談のことなのはご存知の通りだ。
「ホウレンソウを食べればポパイのように強くなれると言っているが、ホウレンソウを食べてる会社がどこも強くなってないじゃないか。なら、うちはやらなくていいと、報・連・相を禁止した。あんなものは大企業がやることで、中小企業には必要ない」
 というわけで「報・連・相」を禁止している。中小企業といっても名古屋証券取引所市場第二部上場会社で従業員数780人の組織である。そこが社員に報告・連絡・相談を一切するなと禁止したのだから、これでは社員の動きを把握できないばかりか、情報の共有も進まないのではと首を傾げた聴衆も多かったに違いない。
 かくいう私もその一人だったが、「ホウレンソウ」について考えるいいきっかけになった。

 指示待ち世代ということが言われ出してから久しいが、自分の頭で物を考えない若者(すでに彼らも中年の域に入っているが)が年々増えている。彼らは細かいことでも一々報告・連絡し、相談にやってくる。「報・連・相」といえば聞こえはいいが、要は自分で考えずに上司に丸ごと投げ、上司の指示、決定を待っているだけなのだ。
 結果に責任を持ちたくない、そんな社員が組織に増殖している。それなら「報・連・相」を禁止した方がかえって業務はスムーズに運ぶというものだ。早い話が「報・連・相」という形の導入ではなく、その中身こそが問題ということだ。

 残業禁止は昨今導入している企業も多い。しかし、同社の場合、労働時間が極めて短い。始業時間8時30分はまだ時差出勤かと納得するところだが、終業時間がその分後ろにずれるどころか逆に30分早めて4時30分。大手企業ならいざ知らず、中小企業で実質労働時間7時間は非常に短いし、導入しているところは少ないだろう。
 さらに驚いたのは年間休日の多さ。GWを連続休暇にしているのをはじめ、盆休みが10日間、年末年始休暇20日間(2011年)と長期休暇が多く、年間では140日の休暇になる。
 ここで目を見張るのが年末年始の連続休暇だ。毎年12月23日〜1月の成人の日までが連続休暇だから、今年は20日間、この年末からは18日間休みになる。クリスマス前から休業になるから取引関係はたまったものではないだろうが、それを貫いているという。
 ここまで休日が多いと給与が少しぐらい低くても文句は出ないだろうと思うが、「社員が働くモチベーションは給料だから安いのはダメ。かといって高いのもダメ。高いと給料を払えなくなる。だから、まあまあの給料がいいんだ」(山田相談役)
                                                 (2)に続く


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る