デル株式会社

 


葬儀について考える(3)
〜新カテゴリーのリビング式場


 一方、価値観も大きく変化してきた。昔のように結婚式と葬儀を人生の二大セレモニーと捉える考え方は少なくなり「葬儀に金をかけたくない」「見栄を張らず質素でいい」「子供達に負担をかけたくないから家族だけで送ってくれ」と言い残す親も増えている。
 とはいえ、これが一昔、二昔前なら「隣近所に恥ずかしい」「部落の風習だ」などと親戚連中に説得され、たとえ不本意でも部落中の人を呼んで、そこそこ盛大な葬儀を執り行わなければならなかった。
 ところがコミュニティーの崩壊で、そうした呪縛から解き放たれたこともある。これが価値観の変化だが、その裏には1億総中流社会から下流社会への転落があることも見逃せないだろう。
 セレモニーは金がかかる。それでも結婚式は未来へ向かってのセレモニーだから、そこでかかった費用を将来取り戻す可能性があるのに対し、葬儀費用の回収はできない。ちょっと不謹慎な言い方かもしれないが、葬儀費用は不良債権に近い。それならばできるだけ金をかけたくない、と考える人達が増えてきたということだ。

 では、小規模葬なら金がかからないのかといえば、そうでもない。規模の大小にかかわらず最低限必要な経費はかかる。式場スペースを小さなものにしても、例えば半分のスペースにしても式場代が半分になるわけではない。むしろ小さいスペースの方が割高になる。逆に参列者が少なければ香典も減る。その分、手出しも増えるというわけだ。
 一般的に家族葬の場合、総額費用はいくらぐらいに抑えることが可能なのか。大体40-50万円以内。どうかすれば30万円代に抑えることも可能なようだ。

 因みに母の直葬でかかった費用と明細は次のようだ。
国産寝台車:出庫地→病院→安置場所(30kmまで)
保全用ドライアイス:10kg
棺一式:桐8分棺(身長により変わる)、棺用布団、神(仏)衣
手続き代行:死亡届提出、埋火葬許可申請、その他の手続き代行
安置室使用料:1泊2日安置室利用(面会不可)
運営スタッフ:火葬までの運営スタッフ
国産霊柩車:安置場所→火葬場(10kmまで)
収骨用具一式:白壺、骨箱、覆付き

 これが家族葬の基本セットで金額は12万5000円。寝台車、霊柩車ともに基本距離内だったから追加費用はなかった。オプションで追加したのはドライアイス10kgの1万円、花束5,000円。
 以上が直葬費用。実際にはこの後、実家に帰って神主に来てもらい、親戚連中や親しく付き合っていた近所の人達に参列してもらい本葬を行ったから、その費用は別だが、最低でこれぐらいの費用でできるというか、最低でもこの程度の費用がかかると捉えるか。見方の違いで新たな問題を生んでいるが、それはまた別の機会に。

新カテゴリーのリビング式場

 小規模葬でいま注目されているものにリビング式場がある。その存在を私自身が知ったのは偶然に近かった。グループホームに入所している母を見舞う途中で何度も見かけながら、その建物がリビング式場だとは気付かなかった。
 最初の頃はカフェかレストラン、あるいは住宅関係のショールームだろうかと思っていた。いつも車で通り過ぎる時にチラッと見る程度だったが、ある時、歩いて通り観察した。「Slowna Living」。建物の表にそう表示されていたが、「Slowna」が何を意味しているのか分からない。ただ、大きなパネルに内部のリビングと思しき写真が4枚掲げられていたので、「ゆったりしたリビング」ということかもなどと勝手に考えていた。



 そこが家族葬を専門に行う斎場で、外観は一般住宅、内部はリビングを模した造りになっていて、故人と親しい人達がリビングに集まり、生前の思い出を語り合い、静かにお見送りする、文字通りにアットホームな雰囲気の中で行う葬儀の形式で、リビング式場というと知ったのはそこに葬儀(直葬)を頼んだ後だった。

 葬儀といっても直葬だが、ネットで調べると「直葬」というキーワードを入れるだけで結構ヒットしてきた。ほとんどの葬儀社が直葬を扱っていると分かり、まず5、6社にネットで見積もり依頼をしたところ5社が資料・見積もりを送ってきた。社名に「直葬」を付け、数日以内に必ず連絡するとホームページに謳いながら、見積もりどころか電話さえ寄越さない業者もあったが、そこは論外としても、残りの葬儀社は皆丁寧に連絡をしてくれ、なかにはわざわざ自宅まで来てくれたところもあった。
 私達も見積もりが届いた後、4社は先方まで出かけて行き担当者に直接会って色々質問もした。面談に行った理由はスタッフの応対を直接確かめたかったからだ。
 「面倒なように思えるけれど、メールや電話のやり取りだけでなく、式場まで行き直接会って話をした方がいい。そうすれば具体的なことが分かるし、他のスタッフの対応も分かる。同じ頼むにしても、ここに頼んでよかったと思えるところにしないと、お母さんとの最後の思い出が嫌なものになるでしょ」
 そう言ってくれたのはパートナーだった。

 私達が最終的に選んだのは「ダビアス」という家族葬専門業者だった。ここに決めた理由は担当者の応対がよく、かつ丁寧だったから。それがリビング式場の葬儀社で、最初に相談をしたスタッフが最後まで担当してくれ、直葬とはいえ、心に残る葬儀ができたと感謝した。
 ところで、同社の経営者は長年、この業界に携わってきた経験者かと思いきや、30代の若手経営者で、この業界の経験はないとのこと。ついでに私達の担当者も以前はカーディーラーにいた業界未経験者。業界の習慣等に染まってないから遺族の気持ちに寄り添った提案、企画ができるのかもしれない。アマゾン・ドット・コムで「お坊さん便」を始めた企業も経営者は若く、異業種からの参入だった。彼らのような若い人達が従来とは異なる視点で、葬儀、法事を捉え直す動きが出てきたのは歓迎すべきことだ。新しい動きに触発され、既存の業界、仏教界も変わればいいが・・・。




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