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権力は簒奪すべし
〜 IDC大塚家具の「内紛」で考えること。(1)


 なかなかの女傑である。北条政子に比肩すると言うのは言い過ぎだろうか。IDC大塚家具の大塚久美子社長(執筆時)のことである。同族企業に内紛は付きものとはいえ、ここまで創業者に「ノー」を突きつけた例は数少ない。あっても創業者一族以外からの「ノー」であり、直系の身内から「ノー」を突き付けられた例はないのではなかろうか。

ワンマン経営者が失敗する時

 「内紛」の場合、表面的には経営路線をめぐる対立と見えても、内実はもっとドロドロとした経営の実権という言葉以上の、金銭絡みの権力争いであることがほとんどだが、今回は少し様相が違うというのも珍しい。
 企業が生き残れるかどうか、そのためにはどのような経営体制が必要かという「路線闘争」であり、週刊誌的な(といえば怒られそうだが)面白おかしく捉えた父娘の権力争いではないし、そのような捉え方をすると見方を間違うだろう。

 経営路線の問題は善悪で論じられないのはもちろんだが、どちらが正しいかどうかもなかなか論じにくい。というのは「勝てば官軍」的な部分があり、路線が正しいかどうかは時代的なものも影響するし、その時の運もある。
 もっと平たく言えば、路線は正しいのに権力争いで敗れるということもままあるからだ。もちろん、その逆もある。
 結局、生き残った方が支持されたということになる。後世、その選択が間違いだったと認められたとしても、だ。
 例えば関が原の戦い。当時の布陣、人数などを見れば西軍が勝つと読むのが普通である。にもかかわらず、西軍が負け、東軍が勝った。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり」で、正義や理念とは別に時の運、勢いなどが影響することがある。それは現代では選挙の場面でしばしば目撃することになる。

 創業者にはワンマンな人が多い。というかほとんどがワンマン経営者だ。ワンマン経営の欠点は人の言うこと(アドバイス)を聞かないということである。逆に意思決定が早いという利点もある。ただし決定の早さと正しさは別問題だが。
 意思決定の早さは攻めと守りのどちらでより効果的に働くかといえば、攻めのシーンだろう。攻めに強いタイプは元々守りのことなど想定してないから、市場から素早く撤退するという方向にはそもそも思考が向かない。
 ワンマン経営の創業者が市場の変化に対応できず、最後は石もて会社を追われることがあるのはそのためである。
 諫言は耳に痛し−−。これは誰でも同じで、好んで諫言を聞こうとする人はいないし、できることなら聞きたくないと思っているはずだ。ワンマン経営の創業者の場合は特にその傾向が強い。「俺の力(それは往々にして経験と勘を別の言葉で言い替えただけだが)でここまで会社を大きくしてきた」という自負があるからなおのことだ。それに対して社員が意見でも言おうものなら、とたんによくて左遷、悪くすれば退職させられる。社員の方も退職させられるのは困るから、トップの言うことを黙って聞くしかない。かくして周囲にはイエスマンだけが集うことになる。

 大塚勝久会長の会見でバックに部長や各店店長クラス(古参幹部)がズラッと勢揃いした光景は一種異様だったが、彼らが全面的に勝久会長の路線を支持しているというより、保身上そうせざるを得なかった側面が多分にあるだろう。
 なんといっても創業者はカリスマである。そのカリスマ性を間近で体験し、また人一倍恐れてきたのも古参幹部達だろう。そんな彼らが創業者に楯突くのはもちろんのこと、意見することさえできないのは容易に想像が付く。そしてそれは退社した後までも続く。まるでマインドコントロールが続いているかのように。

 ワンマン創業者に共通しているもう一つの点は経営の実権を絶対に手放さないことだ。「俺の目の黒いうちは(変化を)許さない」という強い姿勢が共通して見て取れる。変えることを許されるのは自分自身だけで、例え実子であろうと許さない。変化は多分に前例を変えることから始まるからで、それは自分の経営方針、ひいては理念までが否定されると思ってしまうのだ。
 これは洋の東西、歴史を問わず、ワンマン、独裁者に共通しており、言葉を変えれば彼らは変化に怯えているのだ。それは自分が権力の座から引きずり降ろされることにもなるからで、毛沢東も中内功氏も柳井正氏も同じだろう。一時的には権力を譲り(分散し)、第一線を退いたように見えても結局、他の人間がやることに我慢できなくなり自らが復権する。一度権力を手放した寂しさを味わっているから、二度と権力を手放すことはない。おそらくは死ぬまで。
 それ故、自らの地位を脅かそうとするものは誰であれ(それが実子でも)容赦なく蹴落とす。
                                               (2)に続く

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