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集客できる地方とできない地方、その違いはどこにある。(3)
〜点を繋ぐ導線、淀みをどう作るかが重要


点をつなぐ動線の確保を

 鳥取県智頭町と佐賀県有田町はともに県境の地と、置かれているロケーションがよく似ている。智頭町は那岐山を挟み岡山県奈義町との県境にあり、佐賀県有田町は長崎県波佐見町と県境を接している。町を代表する産業は智頭町が林業(杉)、有田町は窯業と、ともに一時代を画しはしたが、その後の産業構造の変換でいまはかつての輝きを失っている。
そして交通アクセスは御世辞にもいいとは言えない。
 しかし、すでに見たように交通アクセスの悪さは必ずしもマイナス要因ではない。
むしろ、閉鎖エリアの方が滞在時間を延ばせる可能性がある。ただ、その場合はすでに述べたようにエリア内の回遊性がどの程度あるかによる。
 要は自然にか人為的にかは別にして、閉鎖エリアを作り出し、エリア内の回遊性をいかに作り出せるかにかかっている。

 では、智頭町はどうか。陸続きであるため、島のように完全な閉鎖エリアではない。しかも、関西方面から鳥取に抜ける道筋である。そのため閉鎖エリアという面では少し劣る。とはいえ昔の宿場町の風情を残した街並みや、国指定重要文化財の「石谷家住宅」、諏訪神社の紅葉にドウダンツツジや桜土手など、観光客を引き付ける材料は十分ある。
 ただ、回遊性という面では必ずしも十分ではない。
回遊性は線でも点でもダメで、大小のポイントとポイントを結ぶ動線が作られているかどうかによる。
 ポイントとは観光客が楽しみながら、ある程度の時間を消費できる場所のことである。
 では、そういうポイントが点在していればいいのか、といえば、それだけでは不十分だ。重要なのかポイントポイントを結ぶ線、つまりポイント間の距離である。
長すぎる線は途中で切れる。観光客が移動せず、途中で諦めるか、最初から次のポイントを目指さない。これでは回遊性は成り立たない。
 小さなポイントの点在は感動が薄い。つまりリピートがない。
 個人的には智頭町は好きな場所で、過去何度か足を運んでいる。しかし、一般観光客に訴えかけるにはいま一つ弱い。例えば案内板の作り方、見せ方をもう少し工夫したり、ポイントと次のポイントの間の動線が長すぎる箇所があり、その中間に何らかのポイント作るなどの工夫も必要だろう。

成功体験を捨て、エリアの一体感を

 次に佐賀県有田町を見てみよう。
有田町は有田焼きで売っている町であり、有田焼きは三大焼き物の一つに数えられるぐらい有名だから、名前を知らないものはいない。
 ただし、知られているのは「有田焼き」というブランド名で、産地としての有田町ではない。全国津々浦々とまではいかなくても、九州エリア内で有田焼きの産地が佐賀県と結び付かない人がいるというのは問題だろう。
 有田町が佐賀県と長崎県境にあるということもあるだろうが、有田焼き=外国でも有名=輸出品=江戸時代の窓口、長崎という連想からなのか、有田焼き=長崎県と思っている人が案外いるという事実に佐賀県や有田町はもっと注意を払うべきだ。有田焼きという商品ブランド名だけが有名ならそれでいいと考えるなら別だが。

 さて、有田町も智頭町同様、完全な閉鎖エリアではないが、他地域と比べてエリアの閉鎖性は強い。しかもエリア内の回遊性は高い。多少、動線が伸び過ぎる嫌いはあるが。ということは、一度このエリアを訪れた観光客が滞在時間を長く取る可能性はあるということだ。
 しかし、逆説的に聞こえるかもしれないが、エリア内の回遊性は低い。何がそうさせるのか。誤解を恐れずに言えば、ここは商人の町である。訪問者に物、そのほとんどは焼き物だが、それを売ることしか考えていないように思える。
 個別に見ていくと、特に窯元訪問は楽しい。しかし、それぞれに完結している。例えばチャイナ・オン・ザ・パークは焼き物のテーマパークといっていい。作品の展示センスは素晴らしいし、作品点数も多い。工場併設のアウトレットで商品を安く買うこともできる。見物に疲れたら飲み物でも飲みながらちょっと一息いれるスペースも設けられている。個人的にもこの場所は気に入っている。だが、ここは有田町の中心部から少し離れている。だから、ここを訪れた後、ほかも見てみようという気がなくなる。
 そう、個別に閉鎖空間を作り出しているが故に、町としての回遊性が低くなっている。言葉を変えれば、地域の一体感が感じられないのだ。こうしたことを訪問者は微妙に感じ取るものだ。

 過去、有田町が賑わっていた時代は個別の競争が全体を押し上げるベクトルになっていただろう。だが、時代は変わった。いま必要なのは過去の成功体験を捨て、地域浮揚を図ることを考えるべきだろう。そのためには地域の一体感が必要になる。
 「地域の一体感」といえば、地域全体のイベントや地域の地図を作り各店を紹介するところが多い。それも一体感かもしれないが、観光客や訪問者の視点でエリア内の配置を考えることが必要ではないか。もう個別のエゴは捨てるべきだろう。
 また、地域を超えたエリアを作り出すことも必要になるだろう。
例えば県境を接している佐賀県有田町と長崎県波佐見町が一つのエリアとして一体感を打ち出し、各種イベントを一緒に行ったり、案内マップを共同で作るなどということは、そう難しいことではないはず。そうすればエリアの回遊性はさらに広まる。
 要はモノを売ろう、人に来てもらおう、という発想ではなく、逆に外部の目で見て、行きたくなるような地域にすることを考えるべきだ。

淀みをいかに作り出すか

 最後に個人的な感想を一つ。最近、地方の色々な場所を訪れて思うのはちょっと休憩するところが少ないことだ。これは団体ツアーで訪れた人も口にしていたが、「ちょっとコーヒーでも飲めるとこが欲しい」と。うどんやそばといった食べ物屋はあるが、ケーキとお茶で少し休めたり、冬ならぜんざいでも食べちょっとあったまる、ちょっと小腹に入れるような所がないのだ。経済面で考えると割が合わないからないのだろう。しかし、訪れる人達がそれを望んでいるとしたら知恵を絞るべきだろう。
 川に淀みがあるように、人の流れにも淀みが必要。淀みがあれば流れはゆっくりになる。回遊性とはそういうことでもある。
 ここでは智頭町と有田町という具体的な地名を出したが、それは架空の場所より具体的な場所の方が理解しやすいと思うからそうしただけで、それぞれ別の地名、エリアに置き換えて考えて欲しい。そうすればどこでも当てはまるはずだ。

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