脱PC・スマホで売り上げアップ(2)


スマホをやめて売り上げアップ

 次はスマホの利用を禁止した企業の例。
 スマホの利用が人々の行動形態まで変えてしまったことは既述したが、それはなにもスマホに始まったわけではなく、ポータブル機器の普及とともに変化してきていた。それがスマホの普及で急激に変わったのだ。
 一言で言うなら「ながら族」の激増である。歩きながら、自転車に乗りながら、運転しながら、会議に出席しながら、講義を聞きながら、スマホを操作している。
 これでは危険この上ないし、会社では仕事にならないはず。といっても、経営者の中にも講演を聴きながらスマホを取り出して頻繁にチェックしている人もいるから、社員はなおのことだ。
 それはともかく、デジタル機器に頼れば頼るほど社内外でコミュニケーションが不足してきたのは事実だ。後5年もすれば新入社員教育は様変わりするに違いない。OJTはほぼ全滅する。なぜなら、後輩を指導すべき先輩が社内コミュニケーションの取り方、顧客先でのコミュニケーションの取り方を指導できなくなっているから、中小零細企業といえども集団で社員教育してくれる組織に1〜3カ月程通わせざるを得なくなる。それを入社前にするか、入社後にするかは別にして。

 昼休みや休憩時間でも社員がスマホを操作し、社内から会話がなくなり、社員同士の雑談の中で共有できていた情報がデジタル化で逆に情報が個人、あるいは課、班の中にとどまり、全社で共有できなくなった。そうした現状に危機感を抱き、2013年7月に「デジタルフリー奨励金」制度を導入したのが岩田製作所(岐阜県関市)だ。
 デジタルフリーとはデジタル機器から自由になる、解放されるという意味だが、同社の場合は私用スマホを従来型のケータイ(フィーチャフォン)に替えるかスマホの使用をやめると、毎月5,000円を支給するというもの。90人いる社員のうち約1/3の30人近くが、現在この制度を利用している。
 「人と話す。本を読む。物思いにふける。そんなアナログ的時間と空間が増えれば、想像力、表現力、他人をおもんばかる力がつく。10年もしたら相当に差が出て、企業としての競争力がつくだろうと思う」と岩田修造社長は制度導入の意図を語る。

交流・情報交換は掛け算

 「交流は足し算ではなく掛け算」とは以前どこかで書いたり話したりしたが、情報交換も同じだ。足し算なら2+4=6だが、掛け算だと2×4=8になる。つまり相対したり、集まって話をしていると、相手の発言に触発され、思考、発想の飛躍が起きる。コミュニケーションとは、この「飛躍」を促す触媒にほかならない。
 逆のパターンもある。2+1=3、2×1=2がそうだ。交流は常にプラスの飛躍をもたらすとは限らず、逆に計画、数値をチェックし、見直しを促される場合もある。その場合は事前チェック機能として働くわけで、これも交流の重要な側面だろう。
 ところがスマホやPCは、この「飛躍」が生まれない。それどころか道具を使っているつもりが、いつの間にか道具に使われていたりもする。便利なものほど落とし穴もある。道具は使うもので使われるものではない。そのことを忘れないようにし、デジタル依存から脱却することが必要だろう。
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