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なんともワンダフルな、中国のホテルサービス(後)


ビジネスパーソン向きの室内?

 天津で泊まったホテルは天津空港側の「天津空港格蘭曇天大酒店(Grand Skylight Hotel Tianjin)」。昨年11月にオープンしたばかりのホテルで、空港まで車で10分以内という便利さが売りになっている。
 最近オープンした中国のホテルはほとんどがヨーロッパを意識した内外装で、とてもオシャレになっている。特にこのホテルはオープン1年未満ということもあり、レストランの調度品などはヨーロッパ調で、デザインセンスもよく、驚いた。

 だが、それ以上に驚いたのは客室内である。
室内の広さもさることながら、ドアを開けて真っ先に目に入ったのは「仕事机」。ホテルの客室で「仕事机」という表現は変だが、形だけの机ではなく、仕事をするのに最適な机で、書斎机と言った方がいいかもしれない。

天津空港格蘭曇天大酒店 まず机の配置がホテルらしからぬ位置である。シティホテル、ビジネスホテルを問わず、ホテルの机は壁に向いて配置されているのが普通だ。ところが、ここでは壁と離れた位置で、窓側を背にし、入口の方を向いて置かれているのだ。
 机はガラス張りで、上には電話もあり、室内に入るとすぐ仕事を始められるようになっている。実際、私は入室後まずこの机の前に座ったものだ。ビジネスパーソンなら、この部屋に入った途端ホッとするに違いない。仕事ができる、と。そういう気にさせる備品だ。
 もちろん、インターネット接続LANケーブルが付随し、インターネットが無料で接続できるのはいまや中国のホテルの常識である。

 だが、ビジネスに配慮したこの環境とちょっと不釣合いというか、違和感があったのが、外から丸見えのバスルーム。全面ガラス張りで、バスルームもトイレも丸見えなのだ。
 これにはちょっと驚いたが、幸いにもスクリーンを下ろし完全目隠しにできたので助かった。
 それにしてもなぜ、ガラス張りにする必要があったのか。そういう需要があったのか。それとも、これが中国式最新サービスなのか。
いやー、中国では面食らうことばかりだ。

お湯が出ない風呂

 面食らったことはまだあった。
天津のホテルに着いた直後、ツアーの中国人ガイドが自信たっぷりに次のように言った。
「このホテルは昨年11月にオープンしたばかりの新しいホテルです。いままで日本人旅行客もたくさん利用しました。いろんな問題もありましたが、全て解決済みです。昨年、お湯が出ないという問題がありました。ですが、完全に解決済みです。お湯が出ない時は20分程出し続けて下さい。そうすると必ず温度が上がります」

 中国のホテルはお湯が出ない、という話は昔よく聞いた。昔とは30年余りも前のことだ。
 最近ではそんなことはありえない。
そう思っていたから、数年前、お湯が出ないという話を聞いた時も笑い飛ばした。それはよほど古いホテルに泊まったのでしょう、と。
 実際、いままで何度か北京、上海に行っているが、そんな目に遭ったことは一度もなかった。ましてやこのホテルはごく最近オープンした最新型のホテルだ。お湯が出なかったのは恐らくオープン直後のゴタゴタの時のことだろう。もうすっかり解決しているさ。中国人ガイドの話を聞きながらも、彼の「完全に解決済みです」という言葉を疑いもしなかった。

 ところが、である。
いざ風呂に入ろうとした時、「完全に解決済みです」という言葉がなんの根拠もない言葉だったことを思い知らされた。
 蛇口をひねり、お湯を出しっ放しにしても一向に熱くならない。事前に「20分程出し続けて下さい」という言葉を聞いていなければ、とっくに切れてクレームをつけていたところだ。
 待つこと約20分。なんとかお湯になってはきたものの、結局ぬる目の風呂に我慢して入った。
 この時は夏だから温度は低めでいいし、水シャワーでもOKだったが、冬だったらどうなっただろう。
 1泊だけの天津だったからよかったが、3連泊の北京のホテルだったらどうなっていただろう。見知らぬ場所では自分でも不似合いな寛容さを示す私だが、きっと我慢できなかったに違いない。

 それにしても最先端・最新と前近代が混在するのが中国。
この程度のことで驚いたり、面食らってはいけないのかもしれない。
良くも悪しくもこれが発展途上の中国なのだから。
しかし、冬場に天津を訪れる人は、このホテルは避けた方がいいかもしれないそれとも風邪を引くのを覚悟で低温風呂に入るか。

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