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日本の製造業はなぜ衰退したのか(6)
〜台湾メーカーに握られた命運


台湾メーカーに握られた命運

 対して鴻海精密工業などの台湾メーカーは徹底した秘密厳守主義を貫き、複数の企業と取り引きをしている。
 例えばフォックスコン(鴻海精密工業)はカメラ業界ではオリンパス、パナソニック、富士フイルム、ソニーからデジカメの受託生産を行っているし、アビリティ(佳能)はニコン、ソニー、富士フイルム、ペンタックス、サムスンから、アルテック(華晶)はニコン、富士フイルム、ペンタックス、サムスンからという具合だ。

 現在、日本企業が世界で強さを発揮している分野は一眼レフカメラだとは既述したが、実態は上記のように台湾メーカーなしにはもはや成り立たない構造になっているのだ。
 その中で唯一、自社生産にこだわっているのがキャノンで、カメラの心臓部、センサーも自社生産だ。因みにニコンはソニー製のセンサーを使っている(一部例外はあるが)。ついでに記しておけば、センサーに関してはソニーが圧倒的なシェアを握っている。
 さすがはキャノン。国内でデジカメを作っているとは立派、などと早合点してはいけない。たしかに大分工場で一部は作っているが、国内工場は無人化していくと御手洗会長兼社長が言うようにキャノンの国内工場は雇用に寄与しているわけでも、今後も寄与するわけでもない。
 ところが、そのキャノンも台湾で生産しているのだ、2008年から。ただ、台湾メーカーへの委託ではなく、キャノンの台湾法人での生産ではあるが。

 ここまで読んだ読者から「ちょっと待て」という声が聞こえそうだ。このまま進めば、日本企業が強いはずの一眼レフでさえ海外企業にお株を奪われ、パソコンや液晶TVの二の舞になりかねないではないか、と。
 その通りである。コダックを追い落としたのは日本企業だが、その日本企業が今度は台湾メーカーに追い落とされかねない局面に直面している。すでにコンデジはほとんど台湾、中国メーカーへの委託生産である。特に三洋電機がパナソニックに買収されて以降は、それまで三洋電機にOEM生産を委託していたニコン、オリンパスも台湾メーカーへの委託に切り替えているから、国内生産はゼロと言っていいだろう。一眼レフの分野はまだかろうじて守ってはいるが。

 しかし、一眼レフの分野で日本企業がいつまで市場に君臨できるのかと問われれば、先行きは覚束ないと言わざるをえない。
 すでに述べたように一眼レフで日本企業が強さを発揮しているのはアナログの部分、つまりレンズがあるからだ。より正確に言えば、レンズ磨きの最終工程ではまだ機械ではなく人の方が優れているからである。もし最終工程まで機械で磨けるようになれば日本企業の独占は崩れるだろう。
 だが、それよりもっと前に日本企業を待ち受けている罠がある。やがて柿が熟して落ちるように、日本企業が自ら播いた種で落ちてくるのをじっと待っている。
 彼らはすでにコンデジのノウハウは手にしている。残るは一眼レフのノウハウ、中でもレンズ磨きのノウハウだ。日本国内でその分野に従事する職人は高年齢化し、技術の伝承は途切れつつある。いや、間違いなく途切れるだろう。代わりに受け継いでいるのが台湾の技術者達だ。

 アナログ技術は人に属するが故に、後継者がいない所では技術が廃れ、後継者がいる所に技術は残る。近い将来レンズづくりの技術が台湾、中国に移るのは間違いない。それでもまだ、そう簡単に一眼レフは作れないだろう。レンズ(アナログ)とセンサー(デジタル)の組み合わせなど、過去の豊富なデータがものを言うからで、部品だけを作っても、部分のアセンブリだけでも、それらを統合するノウハウがなければ作れないが、彼らにはまだそこまでのノウハウがない。

 ところが、それも崩れつつある。それを可能にしたのはまたもやデジタルだ。
 現在の一眼カメラ市場を活性化したのはパナソニックやソニーといった家電メーカーである。彼らがニコン、キャノンの一眼レフ市場に参入しようとして果たせず、代わりにミラーレス市場を開拓。それがきっかけで一眼市場(一眼レフとミラーレスカメラの市場)が全体に活性化したのだ。
 だが、このミラーレス市場で一角を占めるオリンパスがフォックスコン(鴻海精密工業)に製造委託するのではないかと、現在噂されている。
 もし、噂通りなら台湾企業の一眼レフ市場への参入が早まることになるだろう。まずミラーレスで一眼カメラ製造のノウハウを身に着け、次のステップで一眼レフカメラを作る。それが彼らの狙いだ。
 すでにコンデジ市場は飽和状態で、1世代前の機種は1万円以下に値下げしても売れない状態が続いている。仮に売れてもこの価格帯では利益はほとんどないのが実情で、いま各社とも利幅の大きい高級機にシフトしようとしている。
 だが、キャノン、ニコンの2強以外は価格を下げて勝負せざるを得ないから、製造コストの安い台湾企業に依存することになる。

マーケティング力が問われる

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