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ベリースモールでローカル。それでもタナカ イズ ベスト。

(株)田中三次郎商店
所在地:小郡市小郡1139-1
代表者:田中 宏
tel:0942-73-1111
業種:ふるい網、製粉機器および海洋機器材の輸出入

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 地方に存在するキラリと光る中小企業−−そんな企業を取り上げて10数年紹介し続けているが、小郡市の田中三次郎商店は古くさい社名とは正反対に、ビジネスは世界を相手に行い、その分野ではシェアトップを誇るユニークな中小企業である。
(ジャーナリスト 栗野 良)

              

社名も本社屋も純和風
相手にするのは世界

 西鉄小郡駅前の国道沿いに、明治時代を思わせる純和風造りの家屋がある。屋根の上に「田中三次郎商店」と書かれた看板がなければ誰もここが会社とは思わないだろう。
 内部は改造して事務所として使っているが、間取りはほぼ当時のままで、天井には往時そのままに大きな梁が何本も通っている。
 だが、こうした風景に似つかわしくないのが各机の上に置かれたパソコン類と電話の応対に追われている社員達の姿である。電話の相手先は国内はもとより世界中というから驚く。
 鞄c中三次郎商店の設立は昭和29年だが創業は明治10年。今年で127年の社歴を誇る。
 初代が小麦粉をふるいにかける絹製ふるい網の行商で身を起こし、その後、2代目三次郎が製粉工場向け絹網専業に移行し、事業の基礎を作った。
 ところが戦後、ナイロン製品の台頭で絹網の需要が減少しだすと、漁業用網に活路を見出し水産関連分野に進出。現在は製粉用以外に、プランクトン用ネットや栽培漁業用水槽、ろ過装置、ICセンサー付き魚類標識などの開発・販売を行っている。取扱商品の大半がシェアトップである。     

       

魚類用IDタグなど
ニッチ商品が得意

 「うちが相手にしているのはニッチ市場のそのまたニッチな商品です」
 田中宏社長はこう言って笑う。
 製粉・水産関連商品とニッチ商品という言葉は一致しないように思えるが、同社が取り扱っているのはマス市場の中のすき間(ニッチ)商品。渡り鳥の生態を調べるために鳥に付ける小さな発信器やマグロの中に入れるコンピューター、クジラに打ち込む発信器などの特殊なものが多い。まさにニッチ商品である。
 そんなものが売れるのか、あるいは売れても大した金額にはならないのではと思ってしまうが、いずれもその分野ではぜひとも必要で欲しいものばかり。「クジラに打ち込む発信器は1億円ばかり売れました」と田中社長の頬も緩む。
 最近では、魚に付けるIDタグの類が結構売れているという。魚の体内に小さなタグを埋め込み、緯度、経度、進路、対外温度、体内温度を記録したり、水圧、水温、経度、照度を記録するもので、数種類ある。
 「1個30万円もするからあまり売れないだろうと思っていたら、その年に57個売れ、以降1,000万円単位で買ってもらっている」
 販売先は水産庁や水産試験場、水産関係の研究所。
 最近でこそ、こういう商品が欲しいと先方から同社を指名して注文が入るが、当初は販売先開拓も手探り。「パンフレットを作り水産庁などに送る」が、まったく反応もないなど苦労が続いた。
 しかし、特殊な分野だけにパンフレットが目に止まっていたのか、やがて少しずつ注文が入るようになる。

米商務省の調査に
Tanaka is bestの文字

 最近は商品・顧客開拓のため、年8回以上海外の展示会に出展している。きっかけは、当時取り引きがあったスイスの製粉用網メーカーの副社長が言った「お前のところの商品は結構いいものが多いから世界で売ってみないか」のひと言。
 いまでは展示会回りと情報収集で「1年のうち4カ月は海外」で過ごしている。
 海外の展示会場で出会った人脈がビジネスを助けてくれたことも多い。魚の体内に埋め込む小さなIDタグもその一つだ。
 「米のある会社がステンレスに文字を打ち込む装置を開発し販売しているので購入して欲しい」という県の依頼を受け、先方企業へコンタクトを取る。
 しかし、3カ月たっても返事がこない。ほぼあきらめかけていた頃、届いた手紙を読んで田中社長は驚いた。すっかり忘れていたが、手紙の主はスペインの展示会場で知り合った米国人で、その会社の部長だったのだ。
 「後で彼が見せてくれたのですが、取り引きを開始するにあたってアメリカの商務省がうちを調査したらしいんです。そこには会社の規模=ベリースモール、ロケーション=ローカルと書かれていました。
 当時、取り引きを申し込んでいた日本の会社がうちを含め3社あったようで、3社とも優れているが、東南アジアとの取り引きを考えるならタナカ イズ ベストと書かれていました。これはうれしかったですね」
 ちなみに、この商品は「バイナリコーディッドマイクロタグ」といい、直径0.25ミリ、長さ1ミリのステンレスに数字を打ち込む装置。このタグを幼魚の目の縁に埋め込み、成魚になったときに捕獲し、魚の回遊路などを調査するのに使われている。

家訓を守り100年存続

 最近のヒット商品はオーストリアから輸入販売した石臼。きっかけは「世界一大きな石臼を買ってきてくれ」という顧客のひと言。550万円の大型サイズのもの25台を含め、現在までに約5億円超売れている。購入者は製粉工場やソバ工場、製パン業など。セブンイレブンは全国の工場に納品しており「今後、セブンイレブンのソバはおいしくなる」と笑う。
 「社員15人以下、年商15億円以下、申告所得5,000万円を守れば会社は後100年存続できるから、これを守るようにと長男の智一朗に言っています」
 いたずらに拡大路線を走るのではなく、己を知ることが重要と説く。
 


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