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マーケティングをGISでビジュアル化し、
倍々ゲームで伸びているベンチャー企業


潟}ーケットスコープ 代表取締役 高原由之祐氏
福岡市中央区天神二ー九ー一八 ハッチェリー天神/tel 092-738-2652

 次々に市場から姿を消すベンチャー企業が多い中で、倍々ゲームで売り上げを伸ばしているベンチャー企業がある。設立2年あまりの潟}ーケットスコープだ。社員数はわずか3人。社長の高原由之祐氏は43歳。文字通り若い企業である。同社急成長の秘訣とはーー。
                                              (ジャーナリスト 栗野 良)

経験と勘の世界から
科学的なマーケティングを

 マーケットスコープの主業務はマーケティング・営業支援システムの開発・販売、配信サービスである。といっても、即座にピンと来る人は少ないかも分からない。そこで、少し分かりやすく説明すると。
 例えば大型量販店やコンビニなどが、出店に際して周辺地域の顧客層を調査・分析しているのはよく知られている通りだ。最近では、飲食店や病院、中小の商店なども出店予定地域の客層を分析し、店舗戦略、販売戦略、商品構成を考えるようになっている。というより、勝ち残るためには事前の調査・分析・対策が欠かせなくなってきたのだ。
 このように幅広い業種でマーケティング戦略が採用されているが、その中身となると結構あやふやなことが多く、きちんとした数値データに基づいたものというより、経験と勘が幅を利かせていたりする。
 早い話が不動産販売。不動産バブルはとっくに終わっているというのに、いまだに無計画なチラシ戦術と電話帳頼りの電話セールスに終始している。これでは売れるはずがない。1日100件飛び込み、なんて時代も大昔にはあったが、魚がいないところにいくら網を投げても捕れるはずはないのと同じで、非効率なことこの上ない。

予定を3年早めて起業

 そこで不動産コンサルタント事業に乗り出したのが潟}ーケットスコープの高原由之祐氏。リクルート住宅情報の事業課長として培った経験を生かして始めた事業かと思ったが、そうでもなかったようだ。むしろ独立志向が強くて起業したと言った方がより近いだろう。
 当時リクルートは40歳になると早期退職制度が適用されていた。高原もあと3年待ち、40歳になると同時に退職する予定だった。ところが、東京への転勤話が持ち上がってきたので、「転勤すればせっかく築いた人脈もなくなってしまう」と、予定を3年早めての退職、独立だった。

顧客の管理・分析から
定員の10倍を集客
 

 起業当初は明確な事業目標があったわけではなく、広告代理店から頼まれた不動産関連の企画書書きなどをしていた。きちんとした企画書を書ける人間が少なかっただけに仕事は結構来ていたが、ある日、某不動産関係の支社長から「お前はそんなことをするために独立したのか」と一喝され、それから本格的に不動産コンサルタントの仕事に力を入れ始める。
 それまで分かっていたつもりの不動産業界だったが、現場を詳しく見ていく内に驚くことばかりだった。営業はいい客が来ない、と売れないのを企画のせいにし、企画は、客を呼んでいるのに売れないのは営業力がないからだ、と互いに責任のなすり合いをしていた。顧客管理さえきちんと行われてなかった。
 高原がまず提案したのはきちんとした顧客の管理・分析を行うことだった。そして次に、顧客を集める仕掛けをした。
 「顧客の分析結果から、不動産を購入している女性の80%以上が新聞を購読してないことが分かりました。これでは新聞にいくらチラシを入れてムダなだけです」
 高原は女性をターゲットにした、弁当付きの不動産セミナーを開催した。それも市内某料亭の弁当を亭主の解説付きで出したのだ。グルメで客を呼び、不動産を売るという戦術である。弁当を目当てに来る客が多いのではないか、という危惧も一部にはあったが、いざ蓋を開けてみると定員30人のところに300人近い応募が殺到するほどの人気振りだった。当初の計画では年間2、3回の予定だったが、あまりの人気振りに以後、定員40人で毎月開催した。
 だが、不動産コンサルタントといっても所詮は販売の手伝いである。本当にコンサルタントと言えるためには土地の入手段階から関わらなければダメだ。そう考え出していた時、目に付いたのがマクドナルドが出店に際してGIS(地理情報システム)を使っているという情報だった。「これを適用すればより効率的な土地取得ができる」。それまでも顧客データベースなどコンピューターを活用していたが、この頃から本格的にIT技術の活用を始める。

インターネットによる
配信サービスが急伸

 同社が一躍注目されたのは、30代で年収1,000万円以上の人が住む町をパソコンの地図上に表示してみせた時だ。国税調査データを基に分析し、マップ上にビジュアル表示したものだが、この地図情報を使えば土地取得から建設、チラシ配布まで、効果的な手が打てることから、不動産関係のみならず物販、流通、医療関係など様々な業界が注目するところとなった。
 当初はパッケージ販売を行っていたが、1昨年5月からインターネットで配信するサービスも始めている。約1,400項目に及ぶ詳細なエリア分析や顧客分布が行える上、受信データの2次利用も可能だっし、常に最新の地図情報に更新されているとあって利用者も急増している。
 「配信サービスは会員制で月5万円ですが、今後はもっと安くしたいと考えています」
 これからますます楽しみなベンチャー企業である。          
                                      (文中敬称略)
                     2002.11 データ・マックス発行「I・B」掲載



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