Google

 


建築家には施主を、施主には建築家を紹介し、
両者のマッチングを図るエージェント業務


フォルツァ(株) 代表取締役 青木徹也氏
福岡市中央区荒戸1−10ー7ー201/tel 092-715-6233

全国でも初めての試み

 既存の概念・常識に風穴を開ける新しい動きが各分野で起こり、それらが新たなトレンドになりつつある。ユニクロ、良品計画しかり、スターバックス、100円バスしかりである。いずれもユーザーに支持され、急速に勢力を伸ばしている。これらに共通しているのはメーカーの論理ではなく、ユーザーサイドに立った商品の提供や運営をしているということである。メーカーの論理を前面に押し出した態度が消費者やユーザーに受け入れられないのは、雪印乳業や三菱自動車の例を引くまでもなく明らかだろう。
 フォルツァが目指しているのもユーザーサイドに立った住まいづくりである。施主と設計事務所の間に立ち、両者の橋渡しをするだけでなく、最期まで責任を持つところが仲介業とは根本的に異なる。いわば住まいづくりの代理店業。設計事務所を紹介するだけの仲介業でさえ、全国的にもまだ数少ない。もちろん、青木氏の試みは全国でも初めてである。なぜ、青木氏は全国にも例を見ないユニークな仕事を始めたのか。

住宅一筋に歩んできた25年

  「住まいは高い買い物にもかかわらず相談に行くところが決まっているでしょう。住宅展示場とか、工務店、設計事務所、建築家などですが、建築家とひとことで言っても住宅を得意としている人や、住宅でも和風が得意とか洋風が得意、あるいは作風の違いがありますね。外観は洋のモダンでも中には木を使う建築家というようにいろいろいるわけです。ところが、その違いが外部から見ても分からない。例えば医師なら内科、外科、小児科とある程度分かれていますよね。しかし、設計事務所、建築家は分かれてないでしょう。まず、その辺りを分けてあげなければいけないなと思いましたね」
 氏は福岡大学を卒業後、殖産住宅に入社。展示場3つの責任者を兼ね、ハウスメーカーのトップセールスマンとして「正月2日から働」くような毎日を送っていた。在勤25年。殖産住宅一筋の人生である。その同社を去ったのが昨年2月。もともと現在の試みは殖産住宅の中に1部署を作り実施する予定だった。建築家ともネットワークができた。ところが、計画を煮詰めていけばいくほど、「メーカーでは経費がかかりすぎる」ため、社内で実行するのは無理だと判断して独立。
 「まずお客さん自身の話をじっくり聞き出すことから始めます。家を建てようと思われている方がなにを望まれているのかを知るわけです。それによってハウスメーカーの家がよかったり、工務店の方がよかったり、建築家がいいということがあるわけです。それを私自身が判断します。例えば早く家を建てたいと考えられている方に建築家を紹介してもダメです。建築家は時間がかかりますから。そういう方にはハウスメーカーの方が向いています。ですから、ハウスメーカー、工務店、建築家それぞれの特徴や違いを説明し、その中で本当に建築家に頼みたいと言われる人にはじめて建築家を紹介します 」

建築家に対する不安を解消


 「個性化の時代になり、建築家に頼んでみたいという人は増えています。しかし、誰に頼めばいいのか分からない。資金面はどうなっているのかとか、作風はどうなのか、自分達のイメージ通りに作ってもらえるのだろうかとか、もし、作風が合わないときは断れるのだろうかなど、いろいろ不安があるわけです。要は敷居が高いわけですね。そういう不安を解消するのがフォルツァだと考えています」
 和風、洋風、モダンなど家に対して施主が抱いているイメージが大体分かると、今度はそのイメージに近い建築家を複数選び出し面談させる。大体、最初に5、6人の建築家を選び出し、簡単な説明をする。それから建築家との面談だ。面談には必ず青木氏も同席する。それが施主の不安を取り除くことにもなるからだ。
 施主は面談をした建築家に点数を付け、総合点の高い建築家数人に絞って再度面談を繰り返す。現場も案内してもらう。こうして施主と建築家との間の意識のズレ、溝を解消していく。
 「結局、時間なんですね。完成した後でお客さんの不満が出るか、よかったと満足してもらえるかは。うちは着工までに半年、1年かけて、じっくり検討してもらっています。
 建築家との相性もあるんです。これも大事なんですよ。だから必ず複数の建築家と面談するようにしています」
 自分の家づくりコンセプトをレポートにして送ってきた人もいる。以下に少し紹介してみよう。
 「面談を終えた1級建築士の中から3名の方に家3軒を案内して拝見させていただいた。S氏の自宅は……。M氏設計の家は……に特徴。Y氏設計の家は……を参考としたい。……3人合同による設計をお願いしたいくらいである。それを1人に絞り込んで、1人の建築士と十分話し合って進めてくれとはホンに酷なフォルツァさん。三者三様のいいとこ取りをなんとかして欲しいくらい」
 施主のうれしい悩みが伝わってくる。「施主と建築家の気持ちが一緒になることが大事なんです」と青木氏は言う。酒が麹の力を借りて熟成するように、何度も重ねられる面談、打ち合わせで、発注者と設計者の気持ちが熟成していくのを待っているのかもしれない。とすると、フォルツァの役目は杜氏かもしれない。

仲介業ではなくリスクも負う代理店
 
建築家にはアート志向の強い人が多い。その分、PR、営業は下手だ。フォルツァがそこを行う代わりに建築家からは設計管理料の何割かを「業務委託料」というかエージェント料として徴収する。直接的に建築家から受け取るのではなく、施主から受け取った建築費の中から建築家に設計管理料を支払うという形態を取る。
 同社の仕事は施主に建築家を紹介して終わりではない。後のメンテナンス体制を含め、なにかアクシデントがあった時にはフォルツァが責任を持つのだ。設計管理料の根保証も同社が行う。ある意味でリスクも大きい仕事である。この点が仲介業とは異なる。「購買代理店」と青木氏は言う。従来なかった分野の業種だけに適切な日本語が見つからないが、エージェントとはこういうことを指して言う言葉だろう。
 現在、登録している建築家は約30人。会社を設立したのが昨年8月。現在までの実績は15、16件。慌てず、ゆっくりやりたいと笑う。いまのところ登録者は建築家だけだが、今後は施工業者の登録をもう少し広げていきたいと言う。「木造、RC、鉄骨、設備設計、内装工事など、専門業者を数社欲しい」が、いい仕事をしているところをゆっくり探す方針。
 登録業者を選ぶ場合の判断基準を尋ねると「ものの考え方」だという答えが即座に返ってきた。
 「仕事の結果は能力、熱意、考え方の掛け算だと思っている。その中で一番重要なのはものの考え方ですよ。住宅に関していえば、自分が住む家という考え方で作っているかどうか、家づくり、建物づくりに誇りを持っているかどうかですね。次は言うこととやることが一致しているかどうかです。それを見極めるのは一つは評判ですね。だから、時間をかけて探しています」
 会社を辞めて最初に手がけた仕事はイムズで行った「フランスと日本の建築家展」だった。今春5月には博多リバレイン5階のアトリウムガーデンで、建築家25人が手がけた住宅の図面や模型などを展示した「21世紀の住まい提言」を開催し話題を呼んだ。
 最近では病院、医院建設前の開業マーケティング調査の依頼が数件来ており、医療チームを発足して仕事に当たっている。コーディネーター、コンサルタント的な役割も期待されているのだろう。そういう期待に応えるために「公的資金のアドバイザー資格も取得した」と笑う。              (文中敬称略)


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 九州と中国の頑張る企業INDEX