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オフィス用品から企業のトータルコストまで
削減するコンサルティングシステムの提案で躍進


(株)データリンク 代表取締役 川島幸雄氏
福岡市中央区今泉1−9−2 天神ダイヨシビル/ 092-716-36813

 かつては街のどこにでもあった文具屋が姿を消し、いま文具・オフィス用品はホームセンターか、通信販売で買う時代になってきた。なかでも最近伸びているのが通販業界。全国大手のアスクルやコクヨ系のカウネットがよく名を知られているが、九州では(株)データリンクが好調に業績を伸ばしている。とはいえ、競争は激化する一方。そこで同社は今後、新たな分野への進出も計画しているという。躍進の秘訣と同時に、その辺りにも迫ってみる。
                                       (ジャーナリスト 栗野 良)

10年前に現システムを直感
今後は量の拡大より利益確保に

 アスクルやカウネットが「明日来る」「買うネット」など通信販売をイメージするネーミングなのに対し、データリンクという社名はむしろコンピューターのイメージに近い。そう感じていたら、社長の川島幸雄を含め設立メンバーの4人はいずれもシャープのコンピューター販社の出身ということだ。
 「いきなりコンピューターを買って下さいと言うより、まずその会社との取り引きを開始し、口座を作ってもらい、それから少しずつ高いものを提案していき、最終的にはコンピューターだとかソフトや人材などを提案できる環境を作りたいと考えた」
 と川島。
 文具・オフィス用品は企業に入り込むのに一番手っ取り早い商品と考えたようだ。だから今でも「文具屋になろうとは思っていない」と言う。そういう意味では、今後展開していく新規事業こそデータリンクの社名に相応しいものになるのだろうが、そのことは後述する。
 川島が現在のような形態を考える直接的なきっかけになったのは「トイザラスの日本進出」だった。当時、川島は玩具メーカーを担当していたが、それまで「トイザラスになんか商品は出しませんよ」と嘯いていたメーカー、問屋の連中が、トイザラスのオープン日には一斉に店頭に並んで「いらっしゃいませ」と頭を下げている光景を目の当たりにし、これからはメーカー、問屋、小売りという関係が崩れていくと直感したのだった。
 「メーカーから直接仕入れ、消費者に直接安く売ればいける」。そう考えて会社を設立したのが平成2年。ところが、「メーカーの壁が厚くて」数年間は苦労した。だが、時代の風は間違いなく吹いていた。アスクルの知名度アップも有利に働いた。こうして年々売り上げを伸ばしてきたが、2001年1月、コクヨが子会社のカウネットを通じて通販業界に参入すると、一転、競争が激化。いまや資本力勝負の様相さえ呈している。
 同社も対抗上、1昨年はかなりの広告費を投入してチラシその他の広告・販促に力を入れた。その結果、売り上げは急増したが、利益率の方は逆に縮小。しかも、昨年は前年の反動で売り上げの伸びも鈍化。それをきっかけにいままでの方向を見直した。
 「これまでは量の拡大できたが、今後はきちっとした仕事をし、一定の利益が取れる形で推移したい」
 と川島は言う。

直販形式で競合他社より10数%安
著しいネット受注の伸び

  同社の特徴の1つに直販によるコストダウンがある。アスクル、カウネットは販売代理店システムを導入しているため、どうしても販売代理店に10数パーセントのマージンが必要になる。単純計算でもデータリンクの方がその分安く提供できるわけだ。
 だが、アスクル、カウネットと同じ土俵で勝負すれば、知名度や資本力の違いがそのままカタログづくりやスタッフその他への投資力の違いという形で出てくる。
 そこで現在、同社が注力しているのがインターネットの活用である。一口にインターネットの活用といっても2つあり、1つはインターネットによる受注であり、もう1つはITを活用したコスト削減提案である。
 同社はウェブ上に「e-supply」というサイトを開き、ネット上で受注しているが、実は受注の大半はカタログを見て電話、FAXによるものである。この傾向は同業他社も同じで、アスクルでさえネット受注の比率は約25ー28%、カウネットは約15%というところだ。対してデータリンクは27ー28%とネット受注の比率が高いのが特徴。とはいえ、従来型のカタログ通販の域を出ていないという意味ではいずこも同じだろう。

サイトのアクセスは月2万数1,000件
ポイントを絞った情報提供サービスも


 カタログ通販の場合、カタログ発行はせいぜい年1、2回のため、フレキシブルな対応ができないのが弱点。例えば「蛍光ペン太書き3色セット」を5セットだけ販売するなどということはカタログ通販では無理だが、ネット上なら個数限定が可能になる。このように倉庫に残った端数を安く売れば、消費者は安く購入でき、同社も在庫ロスの削減になるわけで双方にメリットがある。
 同社では、このような期間限定商品をサイト上に「今週のバナナ」と題したコーナーを設けて提供している。もちろんコーナー名の「バナナ」はバナナの叩き売りから名付けたものだ。このほかにも100円ショップならぬ「10円バナナの日」というのもある。このような時には「2日で2万件を超えるアクセス」があるという。一部繋がらない状況も出ているので、この4月にはサーバーを増強することにした。
 ネット受注には上記のような利点もあるが、最大のメリットは顧客データベースが作りやすいということだ。どの企業が月間どれくらいの文具・オフィス用品を使用しているかはもちろん、商品内容まで把握できる。例えばある特殊なインクの情報などは会員全てに届ける必要はないわけで、そのインクを過去に購入した会員あてに情報を流せばいいわけだ。このようにポイントを絞った情報提供サービスが可能になり、ムダがなくなる。
 まだまだ比率は少ないとはいえ、ネット受注の伸び率は非常に高く、「近い将来、FAX受注と逆転する」と同社では予測しており、今後はさらにネット受注を増やしていく計画だ。    

中小企業向けに開発した
資材調達システムを提案していく

 同社がネット受注に力を入れる理由は、コスト削減提案サービスをさらに進化させるためである。
 「文具関係のコストダウンには3つある」と川島は言う。
 「1つは、量を束ねることによりコストを折衝し、ルートを決め、調達コストを下げる方法。2つ目は、代替商品を使うことによるコストダウンで、3つめが抑制効果によるコストダウンだ」
 例えばコピー機のトナーには純正品、汎用品、リサイクル品があり、価格はこの順で安くなる。とすれば本当に純正品でなければだめなのか、ということだ。3つ目の抑制効果とは、例えば売上高、人数が同じような営業所を比較することで、A営業所はB営業所に比べてコピー用紙の使用量が3倍も多いというように、それぞれの文具・オフィス用品の使い方が分かる。その結果を提示するだけでもある種の抑制効果が出るというわけだ。
 これらを合わせた総合的な資材調達コストダウンシステムを今後は提案していきたい、と川島は言う。
 資材調達といえば大手企業はネット調達でかなりのコストダウンをしている。しかし、中小企業は資金的にも時間的にもそうしたシステムを開発するだけの余裕がない。そこで同社が開発したシステムを使ってもらおうというわけだ。同社の場合、すでにネット受注という形でそうしたシステムを利用しているので、それを各顧客企業ごとに合う形に一部作り替えれば済むからだ。
 とりあえずは文具・オフィス用品の資材調達コストダウンだが、将来的には通信費なども含めた、企業のトータルコストのダウンを提案していく予定である。いわば顧客企業と共に作っていくコンサルティングシステムの提案。そこに独自路線を見いだそうとしている。(文中敬称略)
                                                  2002.4.4 データ・マックス発行「I・B」掲載


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