鳥取、岡山、兵庫の3県を跨いで走る智頭線という鉄道がある。運営しているのは智頭急行株式会社。第3セクターである。「第3セクター」と聞けばJRから切り離されたローカル赤字路線を思い浮かべるだろうが、智頭急行は設立からして少し違っていた。どのように違っているのかは後述するとして、私が最初に智頭急行に興味を持ったのは芝桜だった。
鉄道沿線沿いに芝桜
芝桜と鉄道会社がどう繋がるのかと疑問を感じられるかもしれしれないが、「撮り鉄」ならすぐ分かるはず。「撮り鉄」でなくても写真に興味がある人なら撮影ポイントと容易に想像がつくのではないだろうか。
国道373号線を兵庫県佐用町役場などがある中心地から中国自動車道・佐用IC方向に走ると、左手に佐用消防署が見えてくる。というより長さ約1kmに渡って植えられた色とりどりの芝桜が目に飛び込んで来るだろう。
芝桜が生えているのは土手の堤防。一瞬、そう感じたが、よく見ると線路沿いの土手だった。鉄路が高架になっており、その斜面に芝桜が生えていたのだった。
私が初めてこの光景を目にしたのは昨年だったが、この場所に芝桜が植えられたのは4年前と手入れをしていた人に教えられた。聞けば岡山県大原駅、宮本武蔵駅、鳥取県恋山形駅などにも芝桜が植えられているという。なんとも粋な計らいをするではないか。これが智頭急行に興味を持ったきっかけだった。
少子高齢化で地方はますます限界集落が増え、やがて町や村は消滅する−−。メディアではそんな論調が目立つし、一般の人の認識もそうだろう。マクロで捉えればその通りだろうが、限界集落は都会も同じ、いや地方以上に深刻だろう。むしろ今後は地方が見直される、ローカルの方が面白い時代になる。そう、私は考えている。
都市と地方の二極化が進む
都市と地方の二極化は今後ますます進むだろう。苦しいのは中規模都市で、人口減と高齢化に悩まされることになるが、地方(ローカル)は早くから緩やかに人口減、高齢化、商店街の衰退が進んできただけに都市部に比べると加工曲線は緩やかで、その分対応も(相対的にだが)できている。
例えば岡山・鳥取・兵庫県境の町村には他県や都市部からの移住者が増え、人口、出生数が増えている町村(岡山県奈義町、西粟倉村、鳥取県智頭町)がある。
従来、地方の活性化に持ち込まれたのは都会の視点だった。安い地代と労働力の提供→都市部からの工場移転→若者の雇用確保→地方活性化という図式はとっくに崩壊しているにもかかわらず、相変わらず工場等の企業誘致が地方の活性化、町おこしにつながると考えている自治体が多い。
だが現実はそうなっていない。地方の工場で働いているのは外国人で、日本の若者は都会へ出ていくか引き篭もり(というのは少し言い過ぎか)で、定住人口増には必ずしも繋がっていない。
右肩上がりの経済時代のモデルをいまも持ち込んでいるからで、すでに前提が崩れているのだから対応も変えるべきだが、相変わらず経済成長期のモデルにしがみ付いているところに問題がある。
こうしたことは交通体系にもいえる。経済第一主義から脱却し、公共交通機関の在り方を考え直すべきだが、発想は儲け第一主義をさらに推し進めている。
その典型が駅中ビジネスと豪華列車で、駅ビルを建て替えてモール化し、すべてを囲い込むビジネスを遮二無二推し進めている。要は自社さえ儲かればいいという考えで、街や地域のことは考えてない。
インバウンド(訪日外国人旅行客)や富裕層相手のビジネスが儲かると聞けば、豪華列車を造って走らせる。その一方で収益に貢献しないローカル路線は廃止か間引き運転を推し進める。
違うだろうと思うが、自治体も地域住民も車があるからまあいいかと諦め顔。かくして公共交通は「公共」でなくなり、1私企業の利益に貢献する交通に成り下がってきた。
だが、歴史の歯車は彼らの思惑とは違う方向へ少しずつ動き始めている。車中心の社会が変わろうとしている、変わらざるを得なくなっているのだ。1つは高齢者の運転問題で、2つ目は環境問題で。
後者の問題に対するカーメーカーの対応は化石燃料車から電気自動車への切り替えで乗り切ろうとしているが、前提条件の製造段階でのCO2排出問題には触れぬままだから、環境負荷の減少は実のところ彼らが言うほどにはならない。
前者の問題は都市部の高齢者の運転離れは増加するだろう。問題は地方に住む住民への対応をどうするかだ。
(2)へ続く
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